Angus Deaton/1945年生まれ。現プリンストン大学ウッドロウ・ウィルソン・スクール上席研究員兼ドワイト・D・アイゼンハワー経済国際関係名誉教授。(撮影:今井康一)

2015年に消費、貧困、福祉の分析に関する功績をたたえられ、ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン米プリンストン大学元教授。長年、調査データと格闘しながら、人々の所得や健康、幸福について考察してきたディートン氏に話を聞いた。

──ICT(情報通信技術)の発展により、データを扱う研究活動に大きな変化はありましたか。

昔は、数字を本から写し取って、グラフを鉛筆で描いていた。私はつねに研究でグラフを使っているが、言うまでもなくコンピューターやICTの活用で研究活動は大いに改善された。

経済全体で見ても劇的な変化があった。入手可能なデータ、それを利用する技術が変わった。私が研究活動を始めた1960年には調査データは少なかったが、今では何千万というデータが入手可能になり、それをAI(人工知能)に投入することができる。

──逆にデメリットはありますか。

理論を積極的に学ばず、データで理論を代替する人たちが出てきた。それは間違いだと思う。また、ポピュリスト政権が世界に脅威をもたらしており、例えばインドなどでは、公的統計が政治的な介入により操作される懸念が高まっている。

データ収集とは本質的に政治そのものだ