60代前半から70代前半の人々には、健康で働く余力が十分あるといわれている。それにもかかわらず、60代前半から70代前半にかけて、多くの人々が仕事を辞めて引退している。

この年代の人々は、働きたいのに働くことができないのか、それとも、もう働きたくないのか。一方、働き続けている場合、本当は働きたくないのに働かざるをえないのだろうか。

このような特徴を持つ高齢者の事情を理解するため、近年、画期的で有効なデータが収集されている。50歳以上の中高齢者を対象とした「くらしと健康の調査(JSTAR:Japanese Study of Aging and Retirement)」である。同調査は、東京大学・市村英彦教授を代表者とする研究プロジェクト「多様な個人を前提とする政策評価型国民移転勘定の創成による少子高齢化対策の評価」の一環として実施されている。

本稿では、清水谷諭・内閣府主任研究官、小塩隆士・一橋大学教授らと筆者が共同で執筆した、高齢者の働く余力について分析した論文を基に、研究成果を紹介していきたい。

われわれはJSTARに基づいて、60歳から74歳までの男性について、就労形態の変化と引退への移行状況について分析した。特長は分析対象である男性を、中年期の代表値として54歳時点を選び、そのとき「雇用者」であった人々と、「自営業者」であった人々の2つのグループに分け、両者を比較したことである。