販売店の店頭には、加熱式たばこのポスターやのぼりが並ぶ。

3月上旬、東京都内の大型商業ビルの喫煙所。スーツ姿の若いサラリーマンがかばんから加熱式たばこの「IQOS(アイコス)」を取り出し、吸う準備をしていたところ、黒いジャンパーを着た男性が近づいてきた。

「アイコスを吸う前に、“こちら”を少し試していただけませんか?」──。男性は日本たばこ産業(JT)の販売促進スタッフで、薦めていたのは1月末に発売された加熱式たばこ「ploom TECH(プルーム・テック)」の新製品だ。男性スタッフはサラリーマンに製品を手渡し、熱心に説明を始めた。

国内の加熱式たばこ市場は、米フィリップ モリス インターナショナル(PMI)の「アイコス」と、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「glo(グロー)」、JTの「プルーム・テック」が競っている。シェアはPMIが約9割と断トツ(英調査会社・ユーロモニター調べ)。残りの1割をBATとJTが分け合っており、JTは新製品の販売促進に力が入る。

加熱式たばこは、スティックやカプセルに入ったたばこ葉を専用のデバイスに挿入して加熱し、発生した蒸気を吸引する。従来の紙巻きたばこと違って燃やさないので、タールや煙が出ず、喫煙時のにおいが少ない。副流煙も出ないため紙巻きたばこほど周囲に気を使わずに済み、家の中で使用しても部屋の壁が汚れにくい。そこで、従来の紙巻きから加熱式に切り替える喫煙者が相次いだ。

市場を創出したのはPMIだ。同社は2014年に名古屋でアイコスのテスト販売を開始し、16年に対象地域を全国へと拡大。BATとJTは17年に市場参入した。以降、各社による大量の広告宣伝の効果もあり、一気に普及が進んだ。市場規模は17年末時点で6000億円規模に成長し、全たばこ市場における加熱式の構成比は20%を超えるまでになっている。