【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

従業員による不適切な動画の投稿が社会問題になっている。コンビニエンスストアや飲食店の従業員が商品を不適切に扱うなどの動画をSNS(交流サイト)に投稿するケースが頻発し、アルバイトが行う事例が多いことから「バイトテロ」とも称される。

従業員のこうした行動は、企業にとってはイメージ低下や衛生面での懸念による客離れを引き起こしかねず、その原因についてさまざまな論評が行われている。しばしば指摘されるのは、若者の勤労意識の低下やSNSでの承認欲求の肥大化、低賃金への不満などである。しかし、企業の人事戦略や労働市場全体の視点から議論されることはそれほど多くないように思われるので、少し述べてみたい。

企業はさまざまな方法でバイトテロを抑止しようとする。最も典型的なものは、従業員に対する監視だ。従業員の一挙手一投足が記録され、問題の予兆があれば直ちに介入できるなら、規律違反は深刻にはならない。しかし、実際には完全な監視体制をつくることはコスト面から難しい。そこで、従業員が規律違反をしにくくするような人事管理を導入することが一般的に行われている。