官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋 (小学館新書)
官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋 (田中秀明 著/小学館新書/800円+税/253ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
たなか・ひであき●1960年生まれ。85年に東京工業大学大学院修了後、大蔵省(現財務省)入省。予算、財政投融資、自由貿易交渉、中央省庁改革などに携わり、内閣府参事官などを経て、現明治大学公共政策大学院教授。著書に『日本の財政』、共著に『財政と民主主義』など。

人事握られ官邸に追従 政治的中立を提唱

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

官僚の不祥事が止まらない。今度は統計不正問題だ。「経済一流、政治二流」と日本が評された1980年代ごろまでは、優秀な官僚が陰で采配していると言われたが、今や見る影もない。本書は、元財務官僚で政策過程を専門とする財政学者が、昨今の政と官の問題を客観的に分析した好著。

政治主導を目指した行政改革の弊害として、官僚不祥事が生じているという。制度変更から20年近くが経過、早期の見直しが不可欠と論じる。

かつては業界、業界を監督する官僚、業界から支援を受ける族議員の三者で政策が決まり、首相といえども介入はできなかった。高度成長期まで問題は目立たなかったが、80年代には環境変化に対応できなくなり、90年代以降、有権者の支持を受けた首相のリーダーシップで対応することを目的に、行政改革や政治制度改革を進めた。2014年の内閣人事局設置で、官邸が高級官僚の人事を掌握し、一連の改革は完了する。

問題は、強い官邸の副産物として、各省庁が官邸に追従するようになったことだ。忖度(そんたく)や不祥事だけでなく、猟官的行動も疑われる始末だ。

本書の分析を当てはめると、統計不正問題は次のような構図になるのだろう。政策を担う現業官庁は、政策立案のために統計を作成していたが、官邸のトップダウンで政策が決まるようになり、手間暇かけて正確な統計を作成する動機付けが失われた。野党は政権関与の有無を追及するが、問題の本質は旧民主党も望んでいた政治主導のための制度設計にある。民主党政権で忖度が生じなかったのは、官僚を排除したためだ。

念のために言っておくと、本書は政治主導そのものに否定的なわけではない。ただ、選挙に大きく左右される政治に官僚が追従するだけなら、お粗末な政策になりかねない。各省庁が専門性を基に官邸をサポートすることが、一国の経済厚生の向上には不可欠だ。

主要国の公務員制度を分析するが、どこも政と官の関係は難しい問題だ。高級官僚を政治任用制とすると、政治的応答性は高まるが、専門性が損なわれる。

本書は、トップまで政治に中立的な英国型を提案する。日本の公務員制度の建前は英国型だが、実態は政治と一体化した独仏型に近い。強い官邸がもたらす弊害を避けるため高級官僚も政治的中立とする英国型が日本に適合すると評者も考える。肥大化した厚生労働省や総務省の分割など興味深い論点が満載だ。