大規模な社会保障制度の導入は、つねに大きなニュースになってきた。最近でも米国の医療保険改革「オバマケア」が、世界的にも注目された。普段は関心のない人々でも、生活に関わる医療・介護・保育・年金などを思い浮かべれば、社会保障制度がひとごとでないことがわかるはずだ。

日本において近年実現した大規模な社会保障制度としては、2000年施行の「介護保険制度」がある。総費用額は初年度の対GDP(国内総生産)比約0.7%(約3.6兆円)から、15年度は同約1.8%(約9.8兆円)にまで拡大した。国のあり方を変えた巨大事業である。

介護と言われてもピンとこない人は多いかもしれない。だが歳をとれば親や配偶者、自分自身が、それなりの確率でケアや介護が必要となり、介護保険と関わらざるをえなくなる。ケアマネジャーと連絡を取り、ケアプランを組み、ヘルパーが家を訪れ、デイサービスを利用する、という風景が日常の一コマになったことはまさに、介護保険が日本の高齢社会を静かに、しかし確実に変えたことを物語っている。

学術研究の世界でも、介護保険が高齢者やその家族介護者に与えた影響について、さまざまな分野で研究されてきた。中でも経済学で注目を集めてきたのは、介護保険が家族介護者、とりわけ「中年女性の就業」にどう影響したかだ。