くるまたに・のぶあき●1980年三井銀行(現三井住友銀行)入行。2012年三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員、15年副社長、17年シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン会長兼共同代表。18年4月から現職。(撮影:今井康一)

不正会計をきっかけに地に落ちた名門・東芝。苛烈なリストラと巨額増資で一命を取り留めた。再建を託された“ザ・金融マン”の車谷暢昭会長兼CEOは、巨艦をどう動かそうとしているのか。

──昨年4月の就任から1年弱、今の率直な手応えはどうですか。

東芝はエンジニアの会社だと改めて感じました。正しいことを、合理的に正しくやりたいという気持ちが強いので、私がやろうとしていることが東芝の皆さんの腹に落ちるかどうかが重要です。中期計画「東芝Nextプラン」の作成でも、私が「こうやってくれ」というのではなく、そうとう時間をかけて現場と対話しました。

結果、中期計画は(株主である)ヘッジファンドの皆さんからも「現場とよく議論をした痕跡が見える」と褒めていただいた。そういう意味では手応えがあります。

ただ、インプリ(実行)については別問題です。東芝はちょっと前まではインプリができていなかった。だから、ファンドからも「これだけの計画をしっかりやり遂げられるかに注目している」と言われました。これは従業員にも率直に伝え、一緒に頑張っていこうと話しています。

──どこまで従業員の腹に落ちているのでしょうか。

今まで話してきたのは課長さんぐらいまでです。さらに工場の方々にもできれば納得してもらい、十数万人全員が同じ方向を向けるようにしていきます。そのために、この会社は丁寧にやらないといけない。賢い人たちなので、マネジメントが「こうやれ」と言っても「変なことを言っているな」となります。

──面従腹背になってしまう。

そういうところはあるので、皆さんの納得感を得ながら丁寧に、スピード感を持ってやります。

──会長を引き受けて後悔はないですか。

最初に(東芝指名委員会委員の)池田弘一さん(アサヒグループホールディングス相談役)、小林喜光さん(三菱ケミカルホールディングス会長)から「率直に言ってそうとうリスクがある。簡単な仕事じゃない。それでも、ぜひやってもらいたい」と言われました。今のところ後悔はまったくないですね。日本の製造業ひいては国にとっても重要な仕事であり、全力を尽くすつもりです。

いちばん心配だったのは、東芝のテクノロジーが弱っていないかということ。しかし、開発力はまったく問題ありません。もう1つは従業員の気持ちです。これが本質的に傷んでいると組織の再建は難しいのですが、合理的にきちんと語りかければ、信頼して合理的に対応してくれる。こうしたインタラクティブなやり取りが非常に機能します。

信頼してくれる人を増やす

──東芝の外部出身者のトップは石川島播磨重工業の技術者出身である土光敏夫氏以来、約半世紀ぶりです。銀行出身の車谷さんは異例で、社内で「お手並み拝見」とみられませんか。