バイロン・シャープの著書『ブランディングの科学』は、伝統的なマーケティング理論に異を唱えた。「伝統的な理論」とはどのようなものなのだろうか。批判の矛先が向けられているブランディング理論の歴史を概観していく。

まずブランドの起源となったのは産地だろう。田中洋の『ブランド戦略論』によると、ローマ時代の学者・政治家・軍人であるプリニウス(大プリニウスと呼ばれる)の『博物誌』には、「ファレルヌム」と呼ばれるワインの産地ブランドについて記述があるという。その後、「産地ブランド」はたばこやコーヒーなど嗜好品に普及する。

日本で企業ブランドが本格的に登場するのは、江戸時代だ。ブランドは屋号という形で世間に浸透していく。呉服屋の三井や大丸、和菓子の虎屋など、屋号が商品の品質やサービスを保証する記号となる、今日のブランドの原型が見られるようになる。