EVベンチャー・テスラを立ち上げた起業家イーロン・マスクもそううつ病を抱える(撮影:尾形文繁)

起業家や経営者と聞くと、どのようなイメージを抱くだろうか。パワフルでタフな人と認識している読者の方も多いだろう。そうした一面もあるが、彼ら彼女らも苦悩を抱えている。不安で眠れず泣きながらメンターなど支援者に電話をかけたり、SNS(交流サイト)上から突如姿を消し、音沙汰がなくなったりするといったことも耳にする。

起業に関しては「資金調達」「上場」などの輝かしい言葉がニュースやSNS上に飛び交う。そうした成功の裏に、「廃業」「メンタル不調」「投資家からのプレッシャー」などが存在する。だが、そのような負の面が人の目に触れることはあまりない。起業のリスクとして存在する「メンタルヘルス問題」は表に出にくいために、起業することで同じように苦悩する人が再生産されている。

起業家のメンタルヘルス問題が表面化しづらいのには理由がある。1つは雇用主と従業員の力関係から、保護すべき対象としては従業員が優先されるからだ。起業家や経営者は自己責任でなんとかなると考えられがちだ。

また事業を引っ張る立場上、従業員に対して弱音を吐きづらい。26歳で株式会社みんなのウェディングに取締役として参画し、東京証券取引所マザーズ上場後に「双極性障害Ⅱ型」になった中村義之さん(現YOUTURN代表取締役)は、当時の心境を振り返る。

「取締役会といったいろんな場で、会社の業績などを説明する立場でした。責任を負う身分だったため、業務をほかの人に任せるのが不安でした。また『これ以上任せたらその人が潰れてしまうんじゃないか』と心配になり、人にうまく任せることができず、結果的に自分が潰れてしまったんです」