今年に入り、ロシアから複数の友人が訪ねてきた。モスクワからも電話やメールが頻繁に入ってくる。その中には、クレムリン(ロシア大統領府)の北方領土戦術を示す機微に触れる情報が含まれている。情報源の秘匿に配慮しつつ、現時点で筆者がつかんでいる情報を紹介したい。

ロシアのプーチン大統領は北方領土問題の解決に向け、情報収集を本格化せよとの指示を出した。1月11日にクレムリンでの安全保障会議の実務者協議において、ロシア外交の重要事項についてプーチン氏が指示を出した。日本に関してプーチン氏は「すぐに安倍晋三首相の訪問がある。難しい交渉が待っている。日本側から最近なされた声明の結果、平和条約交渉の問題をめぐって生じた状況を考慮してほしい。その総括を実際の交渉に生かせる形で示してほしい」。この指示を受けて、ロシアの外務省、SVR(対外諜報庁)、FSB(連邦保安庁)、GRU(軍参謀本部諜報総局)などが情報収集活動を強化した。

ロシア安全保障会議には分析部がある。ここには各省庁、インテリジェンス機関の情報にアクセスできる数名の分析官が勤務する。この分析部で作成された調書がプーチン氏に提出される。彼らは1月22日にモスクワで日ロ首脳会談が行われる数日前に以下の結論を導き出した。

1.日本は1956年の日ソ共同宣言に基づき平和条約を締結することを目的にした熾烈な情報戦を展開している。この情報戦の主目的は、プーチン大統領が歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡すことをすでに安倍首相に約束しているという印象を醸し出すことだ。

2.安倍政権は、歯舞群島と色丹島の主権がロシアから日本に移行した場合、これら2島に将来米国が軍事施設を設置しないよう計らうとの意向をロシアに示している。ただし、日本はこのことについてロシアに長期的保証を与えることは考えていない。