【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

アジャイルという言葉を、近年よく耳にするようになった。「機敏な」という意味の言葉で、そもそもはソフトウェアの開発において語られてきたものだ。

顧客の求めているものが最初から明確ならば、それに沿って仕様を決めてしまいソフトウェアを開発すれば済む。しかし、ニーズがあまり明確でない場合、あるいは開発のプロセスでそれが変化していく場合には、少しずつ開発して、頻繁に顧客の追加の要望や評価をフィードバックさせながら、進めたほうがうまくいく。

細かい定義はさておき、アジャイル開発の基本的発想はこのようなものだろう。

こうした発想は、狭い意味でのソフトウェア開発だけではなく、製品開発においても、あるいは経営全般においても当てはまる。大きな方針に基づいて、粛々とそれを実行すれば結果が出るというのは、目指すべきゴールが明確で、将来のニーズなどの予測可能性が高い場合だ。