伊勢清貴(いせ・きよたか)/1955年生まれ。京都大学大学院精密工学科修了後、1980年トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)入社。レクサス部門トップなどを歴任し、2018年6月からアイシン精機社長(撮影:今井康一)

アイシン精機はデンソーに次ぐ売上高4兆円規模のトヨタ系部品メーカー大手だ。生産品目は駆動系からエンジン周り、シャシー・ボディ関連、カーナビなど幅広い。特に子会社のアイシン・エィ・ダブリュ(アイシンAW)の収益貢献度は高く、主力製品であるエンジンの動力を車輪に伝えるAT(自動変速機)は年間1000万規模を販売し世界首位だ。

アイシン精機グループはアイシンAWのほか、鋳造品のアイシン高丘、MT(手動変速機)のアイシンAI、ブレーキのアドヴィックスなどを抱え、分社経営に特徴がある。ただ2017年にはバーチャルカンパニー制を導入し、パワートレイン、走行安全、車体、情報・電子の事業軸でグループを再編。100年1度といわれる自動車業界の変革が起きる中、グループ会社に分散していたノウハウを集めて総合力を高めようとしている。

1943年設立で航空機用エンジンを生産する「東海航空工業」をルーツに持つ。その後、愛知工業と社名変更して航空機部品から自動車部品へと転換。新川工業と合併してアイシン精機が誕生した。1961年からトヨタ向けにAT生産を開始している。もっともトヨタグループ向け売上高は現在6割弱と最大だが、フォルクスワーゲンやプジョー・シトロエン、ボルボ、BMWなど欧州車との取引が多いことも特徴だ。またトヨタ系の中では中国でのビジネス展開も早く、最近では中国現地メーカー向けにもAT販売を増やしている。

ただ将来的にEV(電気自動車)が普及すると、ATが縮小に向かう可能性もあり、危機意識は強い。そんな中でライバルでもあるデンソーと手を組むことを今回決断したが、かつては考えられない提携だった。異業種を交えた戦いが始まる中、求められているのはグループ内外に分散する知見の結集だろう。トヨタで技術畑を歩んできた伊勢清貴社長の下、型破りの改革が断行されそうだ。

「今のうちに変わらなければ生き残れない」

──将来的にEVが普及すると、トヨタ系部品会はどう変わりますか?

EVが増えれば、当社の主力製品であるATの需要は減っていく。ただ、足元は中国を中心にMTからの移行もあり好調だ。2020年度には1320万台(2017年度比約25%増)の生産体制を目指している。

カメラはフィルムからデジタルへと移行したことで、富士フイルムが生き残った一方、米コダックは潰れた。われわれは右肩上がりで業績が伸びているため、危機感のない従業員が少なくない。自動車業界も100年に1度の変革期にあることを認識し、経営基盤がしっかりしている今のうちに変わらなければ、生き残れない。

アイシン精機のラインナップはパワートレインから情報・電子領域まで多岐にわたる(撮影:尾形文繁)

──EVでATが不要になれば、アイシン精機の売上高は2兆円減るとの指摘もあります。

これまでの資産を活用することで成長は可能と考えている。モーターやギアボックス、インバーターなどを一体化し、幅広いタイプの車に対応する電気式駆動ユニット「eアクスル」を開発しており、これに電動ブレーキや電動ポンプなども合わせたセットで自動車メーカーに提案していきたい。2018年秋のパリモーターショーで初めてこうした商品を展示したところ、多くの反響があった。

さらに人材の面でも電動化シフトを加速させていく。外部からの採用に加え、グループでもカーナビ関連から電動化へ人材を回すなどして有効活用したい。

ライバルのデンソーと手を組んだ狙い

──電動化では2019年4月にデンソーと駆動モジュールの開発・販売の合弁会社を設立します。