前回の小欄で、陽明学について書いたところ、歴史との関わりがよくわからない、とのご指摘をいただいた。たしかに舌足らず、自分でわかった気になっていても、中途半端な理解・叙述だった、と反省しきりである。今回あらためて試みるけれど、やはりうまくいっていないかもしれない。

歴史モノが多かった明代

駄文では、明代・陽明学が歴史を尊重したと述べた。しかしそれは、歴史の著述が多かったという意味ではない。むしろ低調だったというべきだろう。

明代の中国では、書物の出版がすこぶるさかんだった。歴史モノの出版も、その例にもれない。しかしそれは、オリジナルな著作ではなく、既存の書物をダイジェストしたものが多かった。歴史書の傑作『資治通鑑(しじつがん)』の縮約版がおびただしく出たのは、その典型である。手軽に歴史がわかるガイドブック的な編纂(へんさん)物だった。