貨幣になれなかったビットコインの必然 インタビュー/経済学者 岩井克人

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ビットコインの誕生当初から関心を持っていたという岩井氏。貨幣論から見た仮想通貨の実態を語った。

聞き手/井下健悟

いわい・かつひと/東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.D.)。プリンストン大学客員准教授、東京大学教授などを歴任。現在は国際基督教大学特別招聘教授、東京大学名誉教授などを兼職。近著に『経済学の宇宙』。(撮影:今井康一)

2年前、仮想通貨のビットコインは1年で価格が20倍近くも上昇し、熱狂に包まれた。だが2018年の初め、取引所で仮想通貨の大量流出事件が発生し、ブームはたちまち下火になった。非中央集権型で独自の経済圏を形成するかに見えたビットコイン。『貨幣論』の著者である岩井克人氏に、一連の動きについて聞いた。

 

──ビットコインが誕生し、価格の急騰から急落に至るまで、この状況をどう総括しますか。

貨幣論から見ると予期したことが起こったといえます。2016年あたりから急激な値上がりが起きたとき、ビットコインは貨幣になる可能性を捨てたのです。

私はビットコインが誕生した当初から関心を持ち、その動向を見てきました。しばらく地下経済での取引に使われていたようで、それがしだいに通常の経済活動まで染みてきたら貨幣になるかもしれない、と思ったときもありました。しかし、そうはならなかった。

──岩井さんは『貨幣論』(1993年)で、「貨幣とは、言語や法と同様に、純粋に『共同体』的な存在である」と書いています。

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