日本の雇用をめぐる言説には、しばしば「ねじれ」が生じる。企業における人手(労働者)不足の深刻化が伝えられる一方で、「労働市場が改善した実感がない」「労働条件の改善が進んでいない」とも指摘される。コンピューターやロボット、AI(人工知能)などの自動化技術も少子高齢化が進展する日本経済の切り札といわれるものの、人々の雇用を奪うのではという懸念が強い。

このような雇用のねじれが生じる背景として労働経済学は、「需給のミスマッチ」が原因の1つと考えてきた。需給のミスマッチとは、「労働者が有する技能や経験、希望する勤務地や職種等と、雇用者が求めるものとが乖離している状態」を指す。需給のミスマッチが存在すると、労働市場全体では十分な求人が存在するように見えても、地域、職種別に見た実態は全体とは大きく異なるものとなる。

具体例として下図を見てほしい。図はハローワークに登録しているフルタイムの求人倍率(求人数を求職者数で割ったもの)を職種別に示している。求人倍率が「1」を超えると、一般に労働市場は好調であるとされる。

低い事務職の求人倍率

ほとんどの職種で求人倍率が1を上回っている。だが、「事務的職業」「運搬・清掃・包装等の職業」の2つのみ1を下回っている。職種間で非常に大きな求人格差が存在しており、ミスマッチが生じていることを示唆している。

なかでも「事務的職業」は求人倍率が0.48と、1つの求人に約2人の求職者が存在することになる。また求職者の希望職種を見ると、約33%が「事務的職業」と回答。「事務的職業」での就業を望んでも競争率は高く、実際に職を得るのは難しいことがわかる。