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『越境の国際政治 国境を越える人々と国家間関係』 『考えるとはどういうことか』ほか

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越境の国際政治
越境の国際政治(田所昌幸 著/有斐閣/5500円+税/326ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
たどころ・まさゆき●1956年生まれ。79年京都大学法学部卒業。防衛大学校教授などを経て、現在慶応大学法学部教授。専門は国際政治学。『国連財政──予算から見た国連の実像』『「アメリカ」を超えたドル──金融グローバリゼーションと通貨外交』など著書多数。

非正規移民は防げない 訪日者増え、必要な覚悟

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

日本は出入国管理法を改正し、4月から外国人の単純労働を事実上解禁する。移民社会に向け、どのような覚悟が必要か。米墨国境の壁建設問題やブレグジット、欧州のポピュリズム問題など、いずれも移民が関係する。

モノやカネの国際移動では、国際貿易制度や国際金融制度など普遍的なレジームが構築されているが、人の移動は難民を除くと国際的取り決めが存在しない。本書は資本移動が国家や国際政治に与える影響の分析で定評のある国際政治学者が、移民の与える影響を分析したものだ。

モノやカネと異なり、人の流れは一度できあがると継続する。後発者が先発者のネットワークを頼り、川の流れのように一定の経路が作られるためだ。一度移民コミュニティが生まれると、国境を超えた送出国とのネットワークが形成され、受入国と送出国の思惑を超えてダイナミックに人が移動する。

欧州では、生活拠点を築いたゲストワーカーが定住を選択し、家族を呼び寄せたため、移民流入が継続した。社会の分断を避けようと、移民を福祉制度で包摂するリベラルな政策が取られた。今回、そうした選択を避けた日本もいずれ同じ道を歩まざるを得ないのか。欧州では、福祉サービスの受給対象を移民へ広げたことに不満を持つ有権者が増え、それが現在の政治混乱につながっている。

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