山東省の展示会に並んでいたジープもどきの低速EV。基準を満たしていないため一般的な自動車とは見なされず、免許やナンバープレートは義務づけられていない

「日本の軽自動車より小さな、中国の『低速電動4輪』って知ってるかい? 免許が要らない車なので、山東省の農村などでは高齢者や女性たちの足になっていて、無免許運転手の暴走で大勢死んでいるんだ」

数年前、知人から聞いた話は強烈だった。通常の乗用車には衝突時の安全性など多くの基準や法規制が課せられているが、中国ではその枠外にある小型の電動4輪車が存在し、免許を持たない人が運転して街中を走っているというのだ。

確かに、北京の郊外にはそれらしき「車」があった。中心部を外れると、おもちゃのような小さな車をちょくちょく目にする。世界的な自動車メーカーを模倣したロゴやデザインなど、パチモノ臭あふれるものも多く、怪しさ満点だ。

走行速度は最大でも時速60キロメートル程度しか出ないため、標準的な電気自動車(EV)と区別して「低速EV」と呼ばれている。性能や安全性の基準を満たしていないため、乗用車としては認可されていない。したがって、ほとんどの地域では公道を走行できないが、山東省や周辺の河北、河南省の大都市部以外の地域では黙認されている。

山東省などの農村では多くの低速EVが走っている。子どもの送り迎えに使う家庭も多い(撮影:田中信彦)

低速EVが普及している地域の大半が農村だ。買い物や子どもの送り迎えのために女性や高齢者が使うケースが多い。安いものは10万円を切る価格で販売されている。しかも、ガソリン車に比べてかかる燃料代(電気代)は10分の1。所得の少ない農村住民にも手の届くマイカーだ。北京など一部大都市の郊外でも、低所得者のマイカーや商店の配送車として使われている。