トヨタ自動車の豊田章男社長は「自動車をつくる会社からモビリティカンパニーにチェンジする」と宣言し、さまざまなテクノロジー企業との提携を打ち出している(撮影:梅谷秀司)

「新しい競争ルールで、新しいライバルたちと、『勝つか負けるか』ではなく、『生きるか死ぬか』の戦いが始まっている」。日本を代表するトヨタ自動車の豊田章男社長は最近、危機感をあらわにした異例の発言を繰り返している。

100年に1度の変革期に突入している自動車業界。エンジンなどの性能や販売台数を競う時代から、新たな移動サービスを提供するCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)へと競争の軸足が移行。そこで強さを発揮しているのがGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やウーバーテクノロジーズ、ディディ、テスラなどテクノロジー企業だ。

グループ内の再編が急速に進んでいる

今までにない競争相手が現れる中、豊田社長は「自動車をつくる会社からモビリティカンパニーにチェンジする」と発言。自前主義が強かったトヨタだが、「スピードとオープン」をテーマに掲げて、自動運転に欠かせないAI(人工知能)などの知見を求め、ソフトバンクグループなど次々にテクノロジー企業との提携を打ち出している。

トヨタ自動車とソフトバンクは2018年10月、モビリティサービス事業での提携を発表した(撮影:風間仁一郎)

一方、限られた資源を最大限に活用するため、自主独立で競い合ってきたグループ内の再編も急速に進んでいる。豊田社長は「トヨタ単体ではなく、グループの総力を結集し、『ホーム』として強みを持つ会社を見極め、グループ全体が一体となって競争力を強化しなければ、トヨタグループに未来はない。内なる闘いをしている暇はない」と言い切る。既存事業の重複解消による生産性向上と同時に、次世代技術開発への知見集約で、難局に挑む考えだ。

従来のようなトヨタをピラミッドの頂点にして、グループ各社に発注していくやり方には限界がある。トヨタとグループ各社がそれぞれ知恵を出し、相応の分担をしなければ、トヨタも膨らむ研究開発費や設備投資を支えきれない。こうした中で、これまで “黒子役” に徹していたトヨタ系サプライヤーが存在感を増しているのは確かだ。

トヨタは2018年3月、米シリコンバレーにあるトヨタのAI拠点の東京版TRI-ADを設立。グーグル出身のジェームス・カフナー氏をトップに、数年後にはエンジニアを1000人規模に拡大する方針を示した。

実はデンソーとアイシン精機も出資し、トヨタと3社共同で技術開発を行い、3000億円以上の開発投資を実施する。トヨタがマツダなどと設立したEV(電気自動車)の基盤技術開発にもデンソーが最初から加わるなど、主力サプライヤーを巻き込む動きが活発化している。デンソーの有馬浩二社長は「電動化や自動運転の領域が増えるほど、上流段階で車メーカーと一緒に開発する体制でなければ、質やスピードを上げられない」と話す。

「自動運転は単独ではできない」

さらにトヨタは2018年6月、主要な電子部品事業をデンソーに集約する検討を始めたと発表。トヨタの広瀬工場(愛知県豊田市)での生産をデンソーに移管し、量産開発も一本化する方針だ。広瀬工場で生産する主力製品の1つであるPCU(パワーコントロールユニット)は電力を変換するインバーターなどで構成され、モーター、バッテリーと並ぶ電動化の “3種の神器” の1つ。EVの航続距離に関わる重要な部品を内製せず、サプライヤーに移管するのは異例だ。