フランスにおける雇用と子育ての「自由選択」:家族政策の福祉政治 (シリーズ・現代の福祉国家)
フランスにおける雇用と子育ての「自由選択」:家族政策の福祉政治 (シリーズ・現代の福祉国家)(千田 航 著/ミネルヴァ書房/6000円+税/276ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
ちだ・わたる●1981年、北海道生まれ。2013年北海道大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。北海道大学助教などを経て、現釧路公立大学経済学部専任講師。専門は政治学、比較政治学、福祉政治学。共著に『働く──雇用と社会保障の政治学』『福祉政治』。

認定保育ママの成功は日本の政策立案に示唆

評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴

本書は今後の先進社会における労働市場の新しいあり方を視野に入れながら、合計特殊出生率が先進国で最も高いフランスの子育て制度を論じた好著だ。日本での子育て支援策、女性就業人口を増やす方策を考えるうえでも示唆的な論点を多く含んでいる。

欧米諸国は「男性稼ぎ手モデル」の保守主義レジームから「女性の労働市場参画」へと移行しつつあるが、フランスは評者が留学していた1980年代、すでに多くのカップルが共働きだった。男性1人の給料は日本を下回るが、ベビーシッターを雇うことによって女性の就業が可能となり、世帯収入は日本の男性1人分を超えていた。

女性の労働市場参画はライフスタイルの多様化を意味する。あらゆる家族モデルに対応した「自由選択」(親自身で子供を保育することを含む、様々な保育方法を選択する自由)が可能となる労働環境が必要になってくる。

フランスがすべての就業者を対象に家族手当を整備したのは39年だが、それは著者の分類では2階建て構造の1階部分にあたる基礎的給付である(普遍主義的な現金給付)。今日問題となるのは、2階の補足手当部分、つまり就業自由選択補足手当・育児休業給付と、保育方法自由選択補足手当(親が保育者を雇用して働きながら子育てを行うための手当)の部分である。

77〜90年に多様な策が施されたが、中でも著者が強調するのは、「認定保育ママ制度」の充実だ。認定保育ママは保育士よりも短期の研修で資格が取れ、在宅で保育する。

77年にこの制度が導入されたのは、保育所増設が簡単ではないがゆえに、正式な労働契約や社会保障申告の対象外で、その分保育能力の保証がない子守に頼らざるをえないという状況があったためだ。

90年代に、認定保育ママの社会保険料相当分の補償、雇用関連支出についての税額控除など雇用する親への経済的支援が実施された結果、減少傾向だった利用者が急増した。90年に約13万人だった認定保育ママは2012年末に約46万人に達している。

日本でも60年代から家庭保育員という名称で似たような取り組みが自治体レベルであったが、拡大しなかった。日本でもこうした制度の再検討が必要であるというのが著者の政策提言のポイントだ。

専門用語も出てくるが、日本の女性労働力の活用と国民のライフスタイルの多様化・変容に関わる問題提起として大変参考になる。