筆者の堺屋氏は2月8日 午後8時19分、多臓器不全のため東京都内の病院で死去しました。享年83。本連載「堺屋太一の人類発明史」は50回の全体構想を練った上でスタートをしたものですが、未完のまま終わりました。堺屋氏が最後に手がけた壮大なスケールの本連載を幅広い皆さまに読んでいただけるよう、無料開放させていただきます。謹んで堺屋氏のご冥福をお祈りします。(編集部)

 

2足歩行とともに、人類を「人間らしくしたもの」に「言葉」がある。

では、言葉とは何か? 考え出すと意外に難しい。

小鳥はさえずり、犬はほえる。「言語を持つのは人類だけだ」というのは、小鳥のさえずりを解さず、犬のほえ声を聞き分けられない人類の怠慢にすぎない、という主張もある。

一方、人類の使用する言語は多種多様、民族や地域によって異なる。その多様性や違いに着目して、「言語を持つのは人類に共通の特色」という見解に疑問を呈する向きもないではない。

だが、言語学の長年の研究では「完全な音節を持ち、一定の文法を持つ言葉を話せるのは人類だけ」とされている。

小鳥のさえずりや犬のほえ声には、感情の発露や警戒の呼びかけはあっても、音節と文法を用いて複雑な意思表示のできる仕組みがあるのは人類の発する言語だけだ。