【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

労働関係の政府統計を日々眺めている私のような研究者にとって、今回の厚生労働省の不正統計問題は青天の霹靂(へきれき)であった。これまで数多くの経済現象が政府統計によって解明され、そこで得られた知見は政策立案にも役立てられてきた。その基盤となるのは政府統計、とくに今回問題となった「毎月勤労統計」をはじめとする基幹統計の正確さに対する信頼だ。今回の問題が人々の政府統計に対する信認に大きな影響を与えることを、私は心配している。

それは、経済統計を取り巻く環境が以前とは大きく変化しているからだ。現在、インターネットにより莫大な情報が生成されている。その典型例は、ネットで募集・登録された人に対して実施される意識調査などのアンケートだ。中には、何らかの報酬を回答者に与えることで、多くの回答を得ようとするものもある。反面、人々のプライバシー意識が高まっており、アンケート調査そのものに対して拒否反応を示す人々も増えている。