北朝鮮では、元旦に金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長がテレビを通じて「新年の辞」を述べることが慣例となっている。今年も去年と同様に金正恩氏はスーツ姿だった。人民服ではなくスーツを着ることで、「普通の国家」の元首であるというメッセージを国際社会に示そうとしたのである。また、上着には、金日成(キムイルソン)(祖父)・金正日(キムジョンイル)(父)のバッジが付いていなかった。これも去年と同様であるが、金正恩氏が父・祖父の遺訓にとらわれず政策決定に当たっており、フリーハンドを持っていることを示すものだ。

「新年の辞」では、農業、水産業、軽工業を重視し、国民の生活水準を向上させる意思を強調している。引用文は事実上、北朝鮮政府が運営しているウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)に1月1日に掲載されたものを用いる。〈人民生活を画期的に向上させることは、わが党と国家の第一の重大事です。/社会主義経済建設の主要攻略部門である農業部門で増産闘争を力強く展開すべきです。/(中略)軽工業部門では、近代化、国産化、品質向上の旗をひきつづき高く掲げて人民に好まれる各種の消費財を生産、供給し、各道・市・郡で基礎食品工場をはじめ地方産業工場を近代的に一新させ、地元の原料、資源に基づいて生産を正常化しなければなりません〉。北朝鮮にも民意がある。食糧を確保し、日々の生活を向上させることが北朝鮮国民の要望であることを金正恩氏は正確に理解している。

米国との関係に関しては、こう述べた。〈歴史的な初の朝米首脳の対面と会談は、地球上で最も敵対的であった朝米関係を劇的に転換させ、朝鮮半島と地域の平和と安全を保障するのに大いに寄与しました。/6.12朝米共同声明で明らかにしたように、新世紀の要求に合致する両国間の新たな関係を樹立し、朝鮮半島に恒久的で、かつ強固な平和体制を構築し、完全な非核化へと進むというのは、わが党と共和国政府の不変の立場であり、私の確固たる意志です。/そのため、われわれはすでに、これ以上核兵器の製造、実験、使用、拡散などをしないということを内外に宣布し、さまざまな実践的措置を講じてきました。〉

「これ以上核兵器の製造、実験、使用、拡散などをしない」ということは、現時点で持っている核兵器を北朝鮮は保持し続けるということを前提にする。北朝鮮が核保有国であると認めることが米国との関係を正常化する条件である、というメッセージを金正恩氏は出した。金正恩氏は、米国のトランプ大統領がこの条件をのまない場合、〈ただし、アメリカが世界の面前で交わした自分の約束を守らず、朝鮮人民の忍耐力を見誤り、何かを一方的に強要しようとして、依然として共和国に対する制裁と圧迫を続けるならば、われわれとしてもやむをえず国の自主権と国家の最高利益を守り、朝鮮半島の平和と安定を実現するための新しい道を模索せざるを得なくなるかも知れません〉と警告する。