「歴史の中の未来」は物の見方を豊かにする 防衛大学校准教授 赤上裕幸氏に聞く

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赤上裕幸(あかがみ・ひろゆき)/1982年生まれ。2011年、京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。大阪国際大学人間科学部講師などを経て現職。専攻はメディア史、社会学。著書に『ポスト活字の考古学──「活映」のメディア史1911-1958』。(撮影:梅谷秀司)
あのときああしていればどうなったろう、と考えたことがない人はいまい。通常、今よりもましだったのでは、という感慨を伴うこの問い(反実仮想)を、社会、国家のレベルでなすことの意味はどこにあるのだろうか。

「歴史の中の未来」は物の見方を豊かにする

──そもそも、歴史にifは禁物と聞かされてきました。

「もしもあの時」の社会学 (筑摩選書)
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英国の有名な歴史家、E・H・カーが名著とされる『歴史とは何か』で「歴史のif」の発想を「サロンの余興」と批判するなど、物事の原因を説明するのが役目と考える歴史家たちは否定的です。が、すべての歴史家がそうではなく、海外では「歴史のif」に関する論文はもちろん書籍が多数あり、「ユークロニア(どこにも存在しない時間)」というデータベースもあります。また、政治学者や心理学者も「歴史のif」の学術的な研究に参加しています。

──日本ではあまり聞きません。

日本での「歴史のif」の大きな特徴は1990年代に大ブームとなった架空戦記です。太平洋戦争において、もし日本が勝ったら、8月15日以降も戦い続けたらといった小説がよく売れました。一方で、学術的な研究はあまりなく、その意味ではガラパゴス的。ただ、最近は加藤陽子・東京大学教授による、玉音放送がなく阿南惟幾(あなみこれちか)新首相が戦争を継続するという小松左京『地には平和を』の再評価など、変化は出てきています。

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