David Atkinson●1965年英国生まれ。オックスフォード大学で日本学を専攻。ゴールドマン・サックスなどを経て、2009年に文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社。裏千家の茶名「宗真」を持つ。(撮影:尾形文繁)
在日30年。アナリスト、経営者として日本経済の変遷をつぶさに見てきたデービッド・アトキンソン氏。独自の分析から導き出された日本の生存戦略を聞いた。

 

──日本再興に、なぜ最低賃金の引き上げが必要なのでしょうか。

デフレの原因について金融政策のミスなどいろいろなことが言われているが、分析すればするほど、労働分配率の低さに行き着く。

労働分配率低下デフレなのだから、分配率向上インフレに変えればいい。例えば、2人が100万円ずつ給料をもらって全部消費すれば、消費総額は200万円。人口減で1人になった場合、給料が100万円のままなら、消費総額は半分になるが、200万円に引き上げれば総需要は変わらない。なぜそれに気づかないのか。

──だから人口減少に合わせて賃金を上げていったほうがよい、と。

そうだ。人口減少や高齢化が進む中で労働分配率を下げていったら、経済が死んでしまう。

──著書の中で、米国の経済成長の最大の要因はイノベーション(技術革新)ではなく、実は「人口増」であり、今後も人口が増える米国を手本にするのはやめるべきだ、と強調されています。

日本経済を議論するときに、「イノベーションを起こすべきだ」「米国のように新しい企業がたくさん生まれる環境を整備すべきだ」といったことをみんな平気で言う。

確かに生産性が高いのは米国の特徴だが、経済成長率がほかの国より高いことの説明になっていない(詳細は次記事)。「シリコンバレーがあるから、経済成長率が高い」というのは、あまりに単純で乱暴な議論だ。

──日本の産業界には、アップルやアマゾンのような成長企業が1~2社誕生すれば変わると考える人が少なくないと思います。