米テスラ、英アストン・マーティン、ロールス・ロイス、仏ルノー・日産自動車──。ここ1〜2年、ダイソンは名だたる自動車メーカーから大量に人材を吸い寄せている。集まった約400人の開発チームが取り掛かるのは、2021年に発売を予定する電気自動車(EV)の開発だ。同社がEVの開発を始めてから約2年。20億ポンド(約2800億円)を投じて「他社と根本的に異なるEVを出す」(創業者のジェームズ・ダイソン氏)計画は今、どこまで進んでいるのか。

「進捗はとてもいい。計画よりも早めに進んでいるくらいだ」。EV事業の責任者でダイソンCEOのジム・ローウェン氏は、18年9月の来日時、涼しい顔でそう口にした。同年夏には、本社のある英国のウィルトシャー州飛行場跡地でEV事業のために2億ポンド(約280億円)を投資すると発表。約16キロメートルの広大な敷地に計6本のテスト用コースを設置。EVに搭載予定の運転支援機能を含め走行実験を行うと考えられる。また格納庫を改装し、自動車事業の社員を2000人収容できるオフィスも建設する。

英国本社近隣の軍の飛行場を活用して造ったEV開発の拠点

実際のEV製造を担う工場の建設も決まった。場所はシンガポール。「自動車の工場が置かれるのは(米フォード・モーターが組立工場を置いていた)1980年代以来だ!」。18年10月下旬、同国のリー・シェンロン首相は、自身のSNS上で興奮気味に報告した。

この発表は自動車関係者の意表をついた。シンガポールは製造業が未発達で、地価や人件費も高い。普通に考えて、自動車工場に適した場所とはいえない。特に人件費は、一般工の月額平均賃金でテスラが工場建設を進めている中国・上海の3倍にも及ぶ(ジェトロ調べ)。

ダイソンCEO ジム・ローウェン氏