筆者も歴史屋を名乗っているので、歴史小説を読まないわけではない。しかしおもしろいと感じた経験はあまりなかった。歴史を小説・文学というフィクションのエンターテインメントとみるには、どうにも違和感がある。

このあたり個人の嗜好・自身の性向に関わるだけなので、その正誤・善悪を問題にしたいわけではない。ただそんな性向は、やはり自身の資質ともあいまって、学問や作品にも影響する。

歴史学の叙述は時間の流れに即して、社会の全体を明らかにするものにほかならない。個人をとりあげても、それは社会に還元するためである。伝記・評伝・小説は個人の履歴・生涯・人間関係を語ること自体が目的だから、そこで一致しない。