経営共創基盤 取締役 塩野 誠
しおの・まこと●1975年生まれ。企業の事業開発、M&Aアドバイザリーなどに従事。若手ビジネスパーソンのオピニオンリーダー的存在。(撮影:今井康一)

われわれ vs. 彼ら 分断と対立の理由

2018年ほど「分断」が意識された年はなかったのではと思います。外交であれ国内政治であれ、他者との対話を拒否し、身内だけで盛り上がる。意見の異なる相手と違いを乗り越えて協調・協力するよりも、相手の悪口を言い募り排斥する──。そんな風潮が強まった年でした。

社会の分断を考える際に有益なのが『対立の世紀』です。世界各地で起きている分断と対立を伝えながら、その本質的な原因について知見を与えてくれます。

米国ではトランプ大統領支持者とその反対者の対立が先鋭化していますが、その対立を生んでいる大きな要因は中間層の没落です。本書によれば、1970年代には中間所得世帯が米国の総所得の62%を得ていた。それが14年には43%に低下している。エリートの唱えるグローバリズムが中間層を豊かにしていないことに国民の不満は高まっています。

興味深いのは、この本の著者であるイアン・ブレマーがアメリカンドリームの体現者であることでしょう。公営住宅に住むシングルマザーの家庭で育ちながらも、有力な知識人になった。彼の育った時代にはまだそうした社会的な上昇が可能だったわけです。しかし社会の分断が進み、もはやそれは不可能になった。社会から希望がなくなり、ブレマー自身は諦念さえ感じています。「われわれ対彼ら(us vs. them)」という分断が、もはや抜き差しならない状態であることがわかります。

その米国社会の実相を日本の知識人から見たのが、『トランプのアメリカに住む』です。社会学者である東大教授がハーバードに滞在した米国観察記です。

かなり乱暴に言ってしまうと、日本のインテリがトランプランドに住んでみたら、こう見えるという話。米国人の微妙な感情も、この本を読むと理解できます。

日本人は、トランプを支持している米国人というのは、よほど変わった思想の持ち主か何かだと思いがちなのですが、工業が寂れたラストベルトの白人にとってトランプこそが希望であり、生活を変えてくれる指導者です。

しかもそこに民族や宗教の差別感情が入り込む。「白人非エリートの差別意識は、黒人エリートのオバマ的なものに対する根深い反感と一体感をなしていた」と本書は指摘していますが、この感情を自身の選挙のために上手にたきつけたのがトランプなのです。

コンビニの外国人はどこから来たのか

米国を離れて日本のリアルを知りたいという欲求を満足させてくれるのが、『コンビニ外国人』です。