その一挙手一投足が世界の注目を集めるGAFAは、日本でも存在感を放つ。ただ、サービスや製品の点でGAFAを意識することはあっても、日本に拠点を置く日本法人について知られている情報は少ない。GAFA日本法人とはどんな組織なのか。

経歴は一切非開示 アップルの職務執行者

GAFAの中で、日本進出が最も早かったのはアップルだ。1983年、アップルコンピュータジャパンとして日本法人が設立された(現在の名称はApple Japan)。従業員数は2016年8月公表時で約2900人だが、これは日本における社員数で、米本社と雇用関係にある人たちも入っている。また、日本に九つある直営店「Apple Store」の従業員を含んでいる。

初台の東京オペラシティタワーから13年六本木ヒルズへ移転した(撮影:今井康一)

日本法人で長くトップを務めたのは、97~04年に社長だった原田泳幸氏だ。

同氏は98年に「iMac」が発売されるタイミングに合わせ、卸店や販売店を削減する流通改革を行った。その後は、日本マクドナルドホールディングス社長兼CEOやベネッセホールディングス会長兼社長を経て、現在ソニーの社外取締役などを務める。

原田氏の社長退任後はソニーなどに在籍した前刀(さきとう)禎明氏や、日本オラクルなどに在籍した山元賢治氏が日本法人の代表取締役を務めた。アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が死去した後、11年から本社CEOであるティム・クック氏が共同で代表取締役に名を連ねていたこともある。

現在、Apple Japan合同会社の代表社員はアップルのシンガポール法人となっている。職務執行者はダモン・リー・ナカムラ氏と秋間亮氏の二人。日本法人の代表は実質的に秋間氏とみられるが、経歴は公開していない。

Apple Japanが合同会社になったのは11年。合同会社とは06年施行の会社法で新しく設立が認められた会社形態だ。株式会社では業務上の意思決定を担う取締役がおり、その代表として代表取締役がいる。合同会社はその代わりに「代表社員」を置く特徴がある。代表社員には法人(会社)もなることができ、その際は実際に職務を執行する個人を定める。合同会社には会計監査人の設置義務や決算の公告義務がなく、株式会社に比べて会社を維持するためのコストが低く済むというメリットがある。

アップルに次ぎ日本で古い歴史を持つのが、98年設立のアマゾンジャパンだ。

合同会社のため代表社員は米国法人「アマゾン・オーバーシーズ・ホールディングス・インク」で、職務執行者はジャスパー・チャン氏とジェフリー・ハヤシダ氏の二人。ただ実質的なトップは、株式会社時代の01年から社長を務め、メディアへの露出も多いチャン氏とされている。

チャン氏(写真左)とハヤシダ氏(右)が共に職務執行者を務める。ハヤシダ氏は物流部門を統括している

約17年間、アマゾンジャパンのトップを担うチャン氏は香港生まれで、香港キャセイパシフィック航空、米P&Gを経てアマゾンジャパンに入社した。アマゾンジャパン初代社長で、社長の座をチャン氏にバトンタッチした長谷川純一氏はチャン氏について、「一介のスタートアップにすぎなかった組織を大人にしていく能力を持っていた。数字に強いという印象もあった」と語る。

アマゾンジャパンは今年5月、東京オフィスを拡張すると発表した。現在も小売りとクラウド部門を中心にGAFA日本法人の中では突出して多い約6000人の従業員を擁しているが、今後は東京勤務のコーポレート職と技術職(コンピュータサイエンス、機械学習など)の正社員を新たに1000人採用するという。新オフィスはJR目黒駅前の目黒セントラルスクエアになり、従来から使用している目黒雅叙園アルコタワーとアルコタワー・アネックスのオフィスも変わらずに賃借する。

アマゾンジャパンの立ち上げを担い、同社に10年以上在籍した瀧井聡氏は「05年ごろまで人材採用にかなり苦戦していた。誰も振り向いてくれなかったことを思うと今昔の感がある」と話す。

アマゾンの日本における売上高は17年度で約1.3兆円あり、年10%以上の勢いで成長している。この先も業績の拡大が続くことが見込まれ、目黒の拠点だけでは手狭になる日も近そうだ。

東急電鉄も大歓迎するグーグルの渋谷移転

「グーグルさんにお越しいただければ、私どもにもプラスの要素がある」。17年11月、東京急行電鉄の野本弘文会長(当時社長)はグーグル日本法人が東京・渋谷の大型複合施設、渋谷ストリームに移転するとの発表を受けそう語った。

グーグル日本法人は10年から六本木ヒルズに居を構えているが、手狭になり19年に渋谷ストリームへ移転する。14~35階のオフィスフロアを借り切り、発表時点で約1300人いた社員の2倍を収容できるという。

グーグルにとって初の海外拠点となった日本法人の設立は01年。共同創業者であるサーゲイ・ブリン氏、ラリー・ペイジ氏の二人が04年まで取締役に名を連ねていた。

合同会社化したのは16年だ。株式会社として最後に公表した15年12月期決算は、純利益が42億円だった。

代表社員は米国法人「グーグル・インターナショナル・エル・エル・シー」で、職務執行者はピーター・フィッツジェラルド氏。同氏はグーグル入社前、アマゾンで8年間働いていた。

「渋谷ストリーム」への移転を発表したフィッツジェラルド氏(写真右)

日本市場では長らくヤフージャパンと競り合っていたグーグルの日本法人だが、検索エンジンのシェアでは完全にヤフーを制した。StatCounterによると18年11月時点における検索エンジンシェアは上位からグーグル74.9%、ヤフー21.8%、米マイクロソフトの提供するBing2.4%の順となっている。ヤフージャパンは10年からグーグルの検索エンジンを採用しているので、実質的には96.7%のシェアをグーグルが占めていることになる。

かつては日本のネット企業も自前の検索エンジンを開発していた時期があった。現在KDDI傘下のビッグローブは、当時親会社だったNECの研究所と検索エンジンを共同開発していたが、精度の観点から00年にグーグル製に切り替えた。NTTレゾナントが運営するgooは、検索ワード入力時の推測機能を含めた検索エンジンが今でも自社製だ。ただ、基となるデータには03年からグーグルのデータベースを用いている。

検索エンジンの圧倒的な強さから膨大な広告収入を生み出す仕組みは前出記事『AIの開発を加速 グーグル次の標的』で触れたとおり。グーグル日本法人の業績は非開示だが、広告以外の端末やクラウドビジネスを含め、足元では順調に成長しているとみられる。

一方、グローバルに見た場合のグーグル日本法人の位置づけは「かつてと比べると存在感が薄まった」(グーグルOB)との声もある。日本法人が設立された当初「米国本社は地域別のくくりを米国、欧州、日本、その他としていたが、10年ごろから日本はアジア太平洋に含まれるようになった」(同OB)。実際に職務執行者のフィッツジェラルド氏も、業務の報告はアジア太平洋の責任者に行っているようだ。

前出のアップルを含めて、日本市場におけるサービスの存在感と米国本社から見た場合の存在感とには乖離があるのだろう。

登記簿上とは異なるFBジャパンのトップ

米国本社主導の色がより出ているのが、09年設立のFacebook Japanかもしれない。同社の特徴は、日本法人設立から現在に至るまで取締役に日本人が見当たらないことだ。現在の代表取締役は16年に就任したダミアン・ヨ・グァン・ヤオ氏で、シンガポールに在住する。