米国西海岸最北部、シアトルの中心部には、大小30ものアマゾン社屋ビルが立ち並ぶ

年末はクリスマスギフトやまとめ買いで、ネット通販(EC)の需要が最盛期を迎える。ここで圧倒的な存在感を示しているのが、アマゾンだ。

今年の年末商戦の口火を切った同社の米国での巨大セール「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」(いずれも11月末)は、1日当たりの売上高が過去最高を更新。米国株式市場ではこれが好感され、12月初旬には一時、時価総額で初めてトップに立った。

2017年12月期におけるアマゾンの売上高は、前期比3割増の1778億ドル。今期も同水準の増収率を維持する見通しだ。

米国西海岸の最北部に位置するシアトル。その中心部には30以上の社屋ビルからなるアマゾンの本社群がある(上写真)。創業は1994年、現CEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾス氏が自宅ガレージで始めたネット書店だ。そこから急激に規模を拡大した。

わずか2年で従業員数が2倍に

象徴的なのは従業員の増え方だ。全世界の従業員数は61万人を超える(18年7~9月期時点)。特にここ数年の人員拡大には目を見張る。16年7〜9月期から2年で、2倍になった。販売量の増加や、独自物流網の構築に投資していることもあり、GAFAの中でも雇用創出力が大きい。

17年に発表した、シアトルに次ぐ「第2本社」建設計画には、238の地域が立候補し、全米を巻き込む誘致合戦に発展した。アマゾンは新設を決定した2都市に、総額50億ドルを投じて社屋を建設する。そして5万人もの雇用を創出する計画だ(→関連記事へ)。

アマゾン成長の理由は、創業者のベゾス氏が業容拡大のための先行投資に徹し続けたことが大きい。98年、上場後初めて発行した「株主への手紙」でベゾス氏は、自社の成功の尺度について「長期で生み出す株主価値だと思っている」と明示した。続いて配送インフラ強化や海外での展開拡大など次年度のプランを列挙し、「今後の挑戦は事業拡大の方向性を見つけることではなく、(すでに見えている方向性について)投資の優先順位を決めることだ」と記した。

実際、業績動向を見ると、売上高は安定的に積み上がっているのに対し、当期純利益はかなり上下しており、赤字の年もある(上図表)。短期での利益を重視せず大胆に投資してきたことがわかる。

これまでの投資には大失敗もある。99年に米国のオークションサイト、イーベイに対抗するために投入した「アマゾンオークション」は、思うように利用者を獲得できず、わずか半年で撤退した。

だがこの失敗からの学びを生かして00年に誕生したのが、中古品出品サービス、「マーケットプレイス」だ。新品を売る事業者にも徐々に利用が広がり、自社で仕入れて売る従来の「直販型EC」に加え、「モール型EC」としても存在感を高めた。足元ではマーケットプレイス経由の販売点数が同社EC全体の半分を占める。

投資回収までの期間がほかのIT企業より長い傾向にあることを問われた際、ベゾス氏は「2~3年で成功する必要はまったくない」ときっぱり答えている。「1事業を構築するのに5~7年投資し続ける用意はある」(同)。

ロボットやAIで作業の効率化を加速

アマゾンが投資領域として長年注力してきたのが、独自物流網の構築だ。同社は現在、世界におよそ200ものフルフィルメントセンター(大規模物流拠点)を運営し、各地域の需要に見合うよう拠点数を増強し続けている。

これと同時に、庫内作業の効率化にも積極的に取り組んできた。代表的なのが、可動式の商品棚がピッキング担当者の元まで移動する「アマゾンロボティクス(AR)」だ。12年に買収したキバ社のロボット技術を用いたものだ。それまでは従業員がピッキング作業用のカートを押して庫内を往来するやり方が主流だったが、ARの導入拠点では限られた人員で効率的に作業している。

食品ECの「アマゾンフレッシュ」では、生鮮食品の品質チェックにAI(人工知能)を活用しているという。「イチゴの品質をグレーディング(格付け)するのにも、カメラによる視認は人間の目より高い能力を発揮する」。米国で行われたある講演会で、ベゾス氏自身がそう明かしている。

こうして鍛えた物流網は、マーケットプレイスに参加する事業者向けサービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」として外部にも提供されている。商品の保管、注文処理、配送、返品に関する問い合わせ対応まで、すべてアマゾン側で請け負う仕組みで、自社の設備や人員が限られている中小事業者を引き付けた。

アマゾンの成長を支えたもう一つの重点投資領域が、独自の会員プログラム「アマゾンプライム」だ。年会費は米国で119ドル(約1万3000円)、日本では3900円(税込み)と、各国の配送コストやサービス内容によって会費にバラツキがある。日本の場合、会員は当日・翌日配送、日時指定配送が無料かつ無制限に利用でき、動画や音楽の視聴し放題サービス、写真データの保存し放題サービスなどがつく。

豊富な会員サービスでEC以外でも日常的な接点を増やし、利用者を自社経済圏に囲い込む。この勝ちパターンが浸透し、プライム会員は今年4月、全世界で1億人を超えた。

アマゾンがECやプライムのサービス拡充に大胆に投資できるのは、傘下に高い収益性を持つクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」を抱えていることが大きい(→詳細記事へ)。

もともとはセール時の膨大なサイトアクセスに耐えられるよう、自社サーバーを強化することから始まった事業だが、今は外部へのサービス提供を主体に急激に拡大。クラウド事業で世界トップシェアを誇る。

巨大な小売り事業とクラウド事業が同じグループ内にあり、それぞれが抜群の優位性を持っていることこそが、アマゾンの強みだ。

「ごく単純化するなら、米ウォルマートと米マイクロソフトが合併し、かつ組織文化がきちんと統合されたような状態に等しい」。

立教大学ビジネススクールの田中道昭教授はそう語る。

買い物プロセスにさらに深く入り込む

創業から24年。アマゾンが戦略の中心に据え続けるのが「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」だ。ベゾス氏は従業員や株主に対し、「より安く、より速く(配送)、より多く(品ぞろえ)という人々の要求は、この先も変わらない」と常々強調している。

最近は、利用者の買い物のプロセスにより深く入り込む。

独自開発の音声アシスタント「アレクサ」やそれを搭載するスピーカー「アマゾンエコー」などを用い、声だけで買い物できる機能を提供している。米国で展開する無人コンビニ「アマゾンゴー」では、レジを通さず持って外に出るだけで決済できる仕組みを導入した。前出の田中教授は、アマゾンがハードウエア強化の傾向にあることから、「次はアマゾンカー(自動運転事業)では」と言う。

一方で、アマゾンの影響力が強くなるほど、仕入れ先など関係各社との間で力関係が明確になり、ひずみも生じる。