「GAFAと公正に競争できる環境の整備が必要だ」

日本でもGAFAの影響力が強まっている。「市場の番人」である公正取引委員会はどう対応していくのか。杉本和行委員長に聞いた。

すぎもと・かずゆき●1950年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。財務事務次官などを経て2013年から現職。(撮影:尾形文繁)

──拡大し続けるGAFAの存在をどう見ていますか。

GAFAのようなプラットフォーム企業は、消費者に対し有益なサービスを提供している。ただ、プラットフォームビジネスは利用者が増えれば増えるほど利便性の高まるネットワーク効果があり、限界費用もかからない。巨大化しやすく、マーケットにおいて支配的地位を占める傾向がある。

だからわれわれは「アビューズ・オブ・ドミナンス(支配的地位の濫用)」が行われていないかを監視する必要がある。そうした行為が行われると、イノベーション競争を阻害するからだ。

──GAFA全盛の時代にこそ求められる公取委の役割とは。

公取委はあくまで執行する立場だ。個人情報をどう位置づけるのか、競争条件を整備するための制度をどう整えるか、といった点は関係省庁で連携して決める必要がある。すでに経済産業省、公取委、総務省が連携して検討会を開いている(下囲み参照)。

われわれの立場からすると、データのポータビリティ(持ち運び)が確保される環境が整えば、競争政策上は好ましい。スイッチングコスト(サービスの切り替え費用)が低下し、企業が新規参入しやすくなるからだ。ただ膨大な量になる個人情報を受け取る側は、設備投資などのコストがかかるというデメリットもある。

ポータビリティを確保するだけでなく、プラットフォーム企業が囲い込んでいるデータにほかの企業がアクセスしやすくすることも重要だ。プラットフォーム企業の事業は自然独占になりやすい。電力会社における送配電網のようなもので、「エッセンシャルファシリティ(サービス提供に不可欠な設備)」とみなす考え方もある。公正な競争条件を確保するには、ほかの企業がこのエッセンシャルファシリティにアクセスしやすくすることが欠かせない。

──データポータビリティの確保を選ぶのか、エッセンシャルファシリティへのアクセスを選ぶのかの決断が求められる、と。

それは考え方次第だ。どちらかを選択したほうがいいかもしれないし、補完的なことになるかもしれない。それも関係省庁で議論してもらいたい。執行当局としては、健全な競争環境を整備するためにできることは提言していきたい。

──海外に本社がある巨大企業に対して、日本の規制当局ができることに限界はないですか。

独占禁止法は日本の市場に影響があるものについては適用できるということになっている。外国の企業に対して適用できないということはまったくない。

アマゾンには、出品者に価格や品ぞろえの同等性条件(アマゾンでの販売価格や販売条件を最も有利なものとする条件)を定めていたため審査を行った。アマゾンが自ら改めるということで、(昨年6月に)終了した。電子書籍についても同様のことがあった。また取引先に対して費用負担を強要し、不利益を与えている疑いがあり、今また調査に入っている。

課徴金ありきではないが処罰の対象・期間は再考

アップルはiPhoneの販売で(注文数量や料金プランなど)いろいろな条件をつけ、携帯電話会社の事業活動を制限している疑いがあった。ただ契約の一部を改定すると同社から申し出があり、審査は(今年7月に)終了している。