現時点で日本政府は、「四島の帰属に関する問題を解決して、平和条約を締結する」という基本方針に変更はないと主張している。これは、急激な政策変更に世論がついていけなくなることを懸念した便宜的説明にすぎない。政府は「四島の帰属に関する問題の解決」と繰り返すが、「四島の日本への帰属を確認して平和条約を締結する」とは絶対に言わない。論理的に考えてみよう。

四島の帰属に関する問題の解決は、日本4島・ロシア0島、日本3島・ロシア1島、日本2島・ロシア2島、日本1島・ロシア3島、日本0島・ロシア4島の5通りがある。歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島の2島が日本の主権下、国後(くなしり)島と択捉(えとろふ)島の2島がロシアの主権下という形で安倍晋三首相とプーチン大統領が平和条約を締結しても、日本の基本的立場に反しないというレトリックも成り立ちうるのだ。

筆者は、このようなレトリックでなし崩し的に立場を変更するよりも、政府は明確に北方領土問題に関する方針転換を表明したほうがいいと考える。1951年のサンフランシスコ平和条約で日本は南樺太と千島列島を放棄した。当時の日本政府は、放棄した千島列島に南千島、すなわち国後島と択捉島が含まれるという立場を取っていた。ソ連はサンフランシスコ平和条約に署名しなかったので、この条約に拘束されない。55〜56年の日ソ国交回復交渉が始まってから、日本は放棄した千島列島に国後島と択捉島は含まれないと主張し始めた。45年8月にソ連は当時有効だった日ソ中立条約を侵犯して日本との戦争を開始した。国民感情では、国後島と択捉島を日本が要求するのには道理がある。

それと同時に、日ソ国交回復交渉が行われた時期は東西冷戦下だった。米国が沖縄と小笠原の施政権を日本に返還していない状況で、ソ連が歯舞群島と色丹島の返還に応じたら、国内で親ソ感情が高まり、共産主義の影響力が拡大する可能性があった。だから、ソ連側がのめない択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島即時一括返還という立場を取った。

冷戦は四半世紀前に終わった。2017年1月に米国にトランプ政権が誕生してから、北東アジア情勢が急速に変化している。米朝関係が改善し、在韓米軍が撤退する可能性もある。韓国と北朝鮮の関係も劇的に改善しつつある。中国、北朝鮮、韓国が連携を強め、日本に対峙してくる可能性も十分ある。米中対立も一層深刻になる。そのような状況で、日本としてもカウンターバランスを取る必要がある。日ソ共同宣言に基づいて、歯舞群島と色丹島を日本の主権下に置き、国後島と択捉島についてはロシアの主権を認めたうえで日本人が自由に往来でき、経済活動もできる2島返還プラスアルファに安倍政権が舵を切ろうとしているのは、日本の国益に照らして正しい選択だと思う。