週刊東洋経済 2018年12/15号
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「これから大変になりますよ」──。日産自動車の西川(さいかわ)廣人社長は、都内にあるなじみの理容室でそうつぶやいた。理容師は深くは受け止めなかったが、数日後、カルロス・ゴーン会長(当時)が東京地検特捜部に逮捕されたニュースを見て合点した。

11月19日22時から始まった緊急会見(下写真)に臨んだ西川社長は、内部調査でゴーン氏の三つの不正を認定したことを発表。「長年、実力者として君臨してきた弊害は大きい」と不正の背景を説明した一方、「極端に個人に依存した形を脱却するにはいい機会になる」とも語った。22日には臨時取締役会を招集してゴーン氏の会長職と代表権を剥奪。電撃的なカリスマ退場だったが、周到な準備で「Xデー」を迎えたことがうかがえる。

横浜の本社で会見した西川社長。不正を招いた経営陣の一員として彼の責任も重い(撮影:尾形文繁)

内部通報から監査役の調査、内部監査チームも加わった報告書の取りまとめまで、調査への関与は西川社長も含めた数人の幹部に限定。その過程では検察出身の弁護士とも相談し、調査の情報を提供して最後は司直の力を頼った。

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経営陣に不正の疑いがある場合、役員会で問題提起するのが筋だ。だが、「検察からそれは止められていた。役員会で糾弾しても、彼の絶対的な力で潰される。解任の緊急動議を出しても、さまざまな対抗策があると予想された」と、ある日産幹部は打ち明ける。ゴーン氏は、日産の株式43.4%を持つ仏ルノーのトップでもある。強大な権力を前に、通常であれば取られる手続きは踏めなかった。

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