アプリのバーコード画面を提示すると「セブンマイル」が貯まる仕組み(写真:セブン&アイ・ホールディングス)

「いらっしゃいませ!アプリをお持ちでしたらご提示ください」。従業員が問いかけると、客がアプリのバーコード画面を提示する。今年6月以降、全国のセブン-イレブンの店舗で、こうした光景が見られるようになった。バーコードをスキャンすると、「セブンマイル」と呼ばれるグループ共通ポイントが貯まる。

セブン&アイ・ホールディングスがデジタル戦略の転換を急いでいる。まず中心に据えるのが、スマートフォンアプリだ。今年6月にコンビニのセブン、総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂に導入したのを皮切りに、来春にかけて各事業会社のアプリを順次刷新する。

アプリの仕様は各社によって異なる。たとえば、セブンであれば購入商品の内容に応じて「バッジ」が貯まったり、クーポンが付与されたりする。ヨーカ堂では、チラシの閲覧や来店でアプリポイントが付与されたり、8の付く日にアプリのバーコードを提示するとほぼ全品5%オフになったりする。

各社ともグループ共通のポイント「セブンマイルプログラム」が貯まる点は同じだ。セブンマイルを一定数貯めるとランクアップ特典としてnanacoポイントが付与されるほか、人気アプリのお試し特典やイベント・優待への応募権利が得られる(表)。

「オムニセブン」の挫折

セブン&アイはかつて自社のECサイト、Omni7(オムニセブン)をデジタル戦略の柱に掲げていた。グループの通販サイトを結集した「オムニセブン」は2015年11月、鈴木敏文会長(当時)の二男の鈴木康弘氏が主導して立ち上がった。同時に、システム構築や物流整備などに1000億円を投じ、2018年度に売上高1兆円を目指す方針が発表された。

しかし、2016年4月、鈴木会長が電撃的に退任を表明したことで状況が変わる。10月の中間決算会見の場で、井阪隆一セブン&アイ社長はオムニチャネル戦略の見直しを宣言、売上高の目標も2019年度に3000億円とした。同年末には鈴木康弘・取締役も辞任した。

オムニセブンは商品もシステムも内製化にこだわる方針だったため、立ち上げには多くの時間と費用が必要だった。鈴木前会長は「新たに鉄道のレールを敷き、汽車を走らせるのと同じで、多くの先行投資が必要だった」と振り返る。

旗振り役を失ったこともあり、品ぞろえやコンテンツの見直しが遅れた。オムニセブンはここまでほとんど成果を上げられていない。2017年度、グループのネット通販の売上高は1087億円。この中には、ヨーカ堂のネットスーパー事業やセブンの宅配サービスの売上高が700億円含まれている。オムニセブンの売上高は開示されていないが、最大で300億円ほどだとみられる。2017年度決算では、情報システムなどオムニセブン関連で234億円の減損処理も実施した。

オムニセブンのために整備された「セブンネット久喜センター」。低稼働が続いている(記者撮影)

思うような収益を上げられていないオムニセブンだが、当初掲げた目的のうち達成できたこともある。これまでバラバラだった各社サイトの情報を7iDというグループ共通IDで紐付けたことだ。7iDにより、ネットの購買情報を一元管理することができるようになった。

その中で次のデジタル戦略をどう構築すべきか――。そこで始まったのが、冒頭のアプリだった。アプリは各社ごとに仕様がばらばらで、統一感がないように思える。だが、実はそれらには共通する目的がある。それはネット上に続いて、リアル店舗における購買情報を一元化することだ。

リアル店舗では、nanacoというグループ共通ポイントの貯まる電子マネーが存在する。ただ、「nanacoの問題は、プラスチックカードのためわれわれから情報を発信することができないこと」(セブン&アイ・ホールディングスの清水健・デジタル戦略部 シニアオフィサー)。

そこで情報発信が可能なアプリを導入して、原則7iDと紐付けるようにした。アプリではnanaco番号を登録することも可能だ。こうすることによって、客がセブン、ヨーカ堂など別業態で買い物をした場合でも、1人の客として網羅的に把握することが可能になる。いわば、グループの顧客を1人の「個」客ととらえる取り組みだ。

セブンアプリでは利用に応じてバッチが貯まる仕組み。nanacoと紐付けも容易(写真:セブン&アイ・ホールディングス)

先行しているセブンアプリの場合、8月末時点でダウンロード数は515万人に達した。提示率は全国平均で5.3%と高いとはいえない。「声掛けを徹底したほうがいいし、もしかするともっと魅力的なコンテンツが必要なのかもしれない」(清水氏)。ただ、アプリの利用率が10%以上の店は全国平均と比べて客数の改善度が1.1ポイント高いという結果が出ている。

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