【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

仕事について自分自身で学ぶ、いわゆる自己啓発が求められる時代になったといわれて久しい。しかし統計を見ると、自己啓発に振り向けられている時間は低水準だ。一昨年に実施された総務省「社会生活基本調査」によると、有業者が自己啓発や学習に振り向けている時間の平均値は、1日当たりわずか6分にすぎない。

もちろん、自己啓発に期待が寄せられているのには理由がある。まず、企業による訓練が停滞ぎみであることだ。日本企業は職場内訓練(OJT)を積極的に実施することで現場レベルでの生産性を向上させ、それを競争力の源泉にしてきた。綿密なOJTのためには、教え手であるベテラン側に人員的・時間的な余裕が必要となる。

ところが、人員削減や管理的な仕事が増えたことによって、それが難しくなっている。加えて、企業外部で革新的な技術が次々に生み出されている現代では、以前に比べると社内の訓練で継承すべきスキルが縮小している面もあろう。