週刊東洋経済 2018年12/1号
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大学4年生のXはY業界への就職を希望し、最大手のA社にエントリーシートを送付したが、その後不採用の通知が届いた。A社は新卒採用に、採用希望者の適性(職務遂行能力)をAI(人工知能)に予測評価させるプロファイリングシステムを導入している。A社はエントリーシートに記入された事項以外の情報も広くAIの予測評価に使っていることを知ったXは、自分の何がAIの評価を下げたのか悩み始めた。

同業界のB社やC社にもエントリーシートを送付したが、やはり不採用だった。B社やC社もA社と同じプロファイリングシステムを導入していた。Xはその後もAIに「嫌われる」理由がわからず、自己改革の方向性もわからないまま、採用にAIによるプロファイリングシステムを導入していない低賃金のアルバイト職を転々とすることになった──。

AIの予測評価によって社会的に排除され続ける人が多数生じる「バーチャルスラム」化。慶応義塾大学法科大学院の山本龍彦教授(憲法学)が指摘するこうした懸念は、これまで数多くのSF(サイエンスフィクション)小説や映画で主題とされてきた。ショートショートの名手、SF作家の星新一氏が1970年に発表した『声の網』も同じモチーフだ。

国民情報を一元管理 SFの世界が現実に

この主題が今やフィクションからノンフィクションに移りつつある。すでに民間企業の個人格付け機能が浸透している中国では、政府が全国民的な信用情報ネットワークの構築を進めている。個人の場合、犯罪歴や公共料金の納付状況、違法駐車などの不法行為が記録され、公共サービスの利用停止などの措置が取られる。シンガポールではあらゆる公共空間に監視カメラが設置され、人々の一挙手一投足が把握されている。

日本でもすでに企業の採用活動や金融機関でAIスコアリングが使われ始めており、男女の出会いの場でもAIが活用されるようになってきた。

AIというテクノロジーによって、人々がごく一部のエリートと多数の「無用者階級」に分断され、かつてない階層社会が到来すると警鐘を鳴らすのが、『サピエンス全史』『ホモ・デウス』著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏だ。世界が抱える諸問題に大局的な見地を示す知識人の警告に、まずは耳を傾けたい

(本誌:風間直樹)

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AI

黎明期を過ぎ本格的な実用化時代へ突入

AIは黎明期を過ぎ、多くの業界で導入され始めている。米国のグーグルやマイクロソフト、アマゾンなどが、学習済みAIをクラウドで提供するサービスを開始。もはや誰でも簡単にAIを導入可能になった。市場の主導権は米IT巨人が握るが、百度、アリババ集団、テンセントなどの中国勢も政府の後押しを受け猛追している。日本勢は人材不足もあり、米中に水をあけられているのが現状だ。