今年4月に新宿マルイに誘致した「Apple 新宿」。近年は「モノからコトへ」を意識して、体験型店舗の展開に力を入れている(編集部撮影)

次世代を見据えた改革を次々と実行してきた丸井グループ。小売り事業では目下、ビジネスモデルの転換を急ピッチで進めている。

従来は店舗で商品が売れたときに収益を計上する百貨店型ビジネスが主だった。しかし、いまはテナントからの賃料収入を軸とする不動産型ビジネスがメインとなっている。不動産型に移行した売り場面積の比率は2015年3月末で7%だったが、2018年9月末には96%にまで高まっている。

今後は「モノを売らない店舗を目指す」と公言している青井浩社長。連載第2回では、その言葉の神髄に迫る。

ダウンサイドリスクに弱い収益構造

──EC(ネット販売)が勢いを拡大しています。小売り店舗への影響は大きいのではないでしょうか。

リアル店舗でモノを買う人は今後減り続け、そしてリアル店舗の売り上げもどんどん下がるだろう。逆に、ECは勢力を増すと見ている。

その際に、百貨店を中心とする小売り業態は大きな問題に直面する。当社のような業態は、損益分岐点が非常に高い。一般的に、この業態の損益分岐点比率は90%ぐらいではないだろうか。戦後の右肩上がりの時代ならば、損益分岐点が高くても、売り上げが拡大すれば利益もたくさん確保できる。だが、売り上げが前期並み、あるいは右肩下がりになると、損益分岐点が高いのですぐ赤字になってしまう。

さらに厳しいのは、赤字になった後に、歯止めがかからないこと。売り上げが少し減ると損失が広がって、そこからまたさらに広がると、2倍も3倍も損失が膨らむ。つまり、この業態の収益構造は、「ダウンサイドリスクにものすごく弱い」と言える。

──となると、少子高齢化が進むこれからの国内市場では、百貨店やファッションビル業態は軒並み「水面下に沈む」ということでしょうか。

長期的にリアル店舗の売り上げが下がる見通しに立つならば、この業態は長期的に赤字が続いて、その赤字額がとどめようもなく拡大することを想定せざるをえない。

そのため、外部環境が変わって需要が増えていく前提で経営を描くのではなく、需要が減っていくことを前提に考えなければいけない。チャンスを取っていくより、どうやってダウンサイドリスクを遮断するのかが、経営課題としては優先ということだ。

2016年に開業した「博多マルイ」も不動産型のビジネスモデルを採用し、事業基盤を安定させている(編集部撮影)

その方向に沿って、テナントからの固定家賃を中心にした不動産型のビジネスモデルに切り替えていくことにした。少なくとも固定家賃の部分は、たとえば5年契約なら5年間確保されるので、経営が安定してくる。

モノを売らなくても「にぎわっている店舗」を目指す

──しかし、モノが売れなくなるとテナントも経営が厳しくなります。ひいては丸井グループの収益に影響してくるのでは?

当社のもう1つの大きな課題は、“モノからコトへ”といった需要変化への対応だ。丸井グループはかつて、小売り店舗の地下1階から地上8階まで、ずっとモノばかりを売っていた。しかし、これからは顧客の関心がモノからコト、サービス、体験へと変わっていくであろう。そのときに、飲食や体験型サービスなどが提供できないと顧客は来てくれないし、お金を使っていただけない。今後は、そういった店舗を増やしていきたい。

──具体的には、どのような店舗ですか?

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