【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

英国内での小旅行の帰路、ウェールズとの境に近いヘリフォードの街から列車に乗った。車内の作りが、往きの列車と違い、どことなく日本の新幹線を思わせた。コート掛けやテーブルの仕様に、日本らしさを感じたのである。終着駅で確認すると、はたして日立製作所製だった。日立の鉄道ビジネスが英国で成功しつつあることは知っていたので、なるほどと思った。試験走行中の日立製列車が架線を切断するという事故の数週間前のことだ。何が事故の原因だったのかはまだわかっていない。

日立が英国の鉄道ビジネスに食い込めたのは、電車とディーゼル車の両機能を備えた列車の開発に成功したところが大きい。同じ路線の中に、電化区間と非電化区間がいまだに多く混在するためだ。

1825年に世界で初めて鉄道が敷設されたこの国では、電化率を高めることが今なお課題である。信号機や軌道、駅の施設・設備にも旧式のものが残され、それらが鉄道近代化のネックとなっている。