社長就任以来、「データの会社になる」と強調する川邊健太郎氏。今後の成長に向けた青写真をどう描いているのだろうか(撮影:今井康一)

「ヤフーは創業以来、サービスを通じて膨大なデータを蓄積してきた。そのデータの力をより解き放っていきたい」―― 。ヤフーの川邊健太郎社長は、2018年1月の社長就任会見でそう強調した。

2月にはデータを活用した新事業構想「DATA FOREST(データフォレスト)」を発表。「Yahoo!ニュース」読者の閲覧履歴、「Yahoo!ショッピング」の購買履歴、ID会員の行動履歴などを活用し、日産自動車、江崎グリコといった事業会社に加え、自治体や研究機関とも実証実験を始めている。さらに10月には、自社で保有するビッグデータから独自のスコアを作成し、これを用いてパートナー企業や一般ユーザーにサービス提供を行う新たな取り組みを打ち出した。

データ関連事業を育成することで、ヤフーという会社はどう変わるのか。川邊社長へのロングインタビュー、最終回ではこのテーマにフォーカスする。また締めくくりには、「週休3日」「新幹線通勤」などユニークな人事制度を打ち出すヤフーの「働き方改革」や、その背景にも迫る。

データ分析の"下請け"で終わらないために

──何かの施策を改善したり、新たな気づきを得たりするために、今は人間の力だけでなく、データと人工知能(AI)の力をどう活用するかがカギになっています。年初には企業間ビッグデータ連携の新たな取り組み「データフォレスト構想」も発表されましたが、以後の進捗は?

発表後、ぜひうちもやりたいという会社から何十もの問い合わせをもらっている。その中から案件を選び、実証実験の数は発表当時の10から20に増えた。多種多様な取り組みから、いろいろなインサイトやニーズ、具体的な成果が見えている。来年度には本格的に事業化したいと発表しているので、今年度の終わりくらいには今行っている実験の結果や、それに基づいてどういうデータソリューションサービスを提供するのかを明らかにしたい。

中でも需要予測みたいなものは非常に親和性が高そうだ。人の好みやブームの細かな変化は、普通のメーカーでは追いづらい。ヤフーには膨大な検索データがあり、ここからわかるトレンド変化とメーカー側が持っている実購買データを掛け合わせれば、より精度の高い需要予測ができるはず。あとはもっと単純に、データをどういう切り口で見ればいいかわからない、データによる「可視化」を手伝ってほしい、というニーズも根強い。

ビッグデータ時代といわれるものの、データ自体はたくさんあるけど「so what?」みたいな会社は少なくない。そこをちょっとお手伝いする役割を、ヤフーなら担えると思う。とはいえ、相手にもらったデータだけで分析を行うのではただの下請け。ヤフーの情報を掛け合わせることでどんな付加価値を付けられて、事業やサービスを考える人にどんな刺激を与えられるのか。そこを強く訴求したい。

──どんな事業形態になりそうですか?

できればデータソリューションサービスという形で、B to B事業の新しい収益柱として立ち上げたい。今のヤフーの収益構造を見ると、企業から得ている売り上げとエンドユーザーから得ている売り上げ、ざっくり2種類がある。その中の企業から得ている売り上げについては、現時点では99.9%が広告だ。これとは別に、企業からお金をいただける新しい機会を創出したい。

──川邊さんは社長就任会見から一貫して「データの会社になる」と強調されています。ヤフーの中で「データドリブン」が極まっていくと、会社の見え方そのものも変わるでしょうか。

ヤフーとしては「データの会社」というキーワードを強く発信しているが、外の人から見れば、まだ単純に「便利なネットサービスを提供している会社」というイメージしかないと思う。データ関連の事業を軌道に乗せることで、そのイメージにプラスして「世界でいちばん日本に住む人たちのことを理解している会社」みたいなイメージを持ってもらえるようにしたい。

このイメージが固まると、企業で製品やサービスを作っている立場の人なら、ヤフーにマーケティングの相談をしよう、新規事業の相談をしよう、といった想起をしてもらえるはず。日本市場に向けて何かビジネスをしようと思ったときに、企業が真っ先に頼りたくなるような会社になっていければと考えている。

目的なき「働き方改革」になっていないか

──日本では今、政府主導で「働き方改革」の大号令がかかっています。いろいろな会社がいろいろな施策を打ち出していますが、ヤフーの「働き方」の現状をどうとらえていますか。

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)/1974年生まれ。青山学院大学在学中に起業を経験。2000年ヤフー入社。「Yahoo!ニュース」の責任者などを経て、2012年に副社長。2018年6月から代表取締役社長(撮影:今井康一)

井上(雅博・ヤフー元社長・創業者)さんの作った企業文化が今でも大きいと思う。どういう文化かというと、インターネットを使って世の中の課題解決をしよう、それによって感謝される会社になろう、と。僕は「インターネット大好き人間集団」と表現しているが。そういう集団なので、働き方も極めて合理的。ムダなことはしたくないし、目的に対して低コストで、最短距離で到達することを重んじる。まず根底にそういう組織文化はある。

宮坂(学・前社長)体制の時に、それがさらに研ぎ澄まされた。当時は「パソコンのヤフー」から「スマホのヤフー」に大転換する必要があった。でも、内心は「パソコンのままでいいじゃん」と思っている社員も多かった。そういう転換期に重要になるのがコミュニケーションだ。特に(上司と部下が)1対1でしっかりミーティングを行う文化は、この時期に醸成された。

そもそも、パソコン・スマホにしても、インターネットにしても、それ自体が「Power to the people」というか、人々が自由を得るための武器みたいな側面がある。それを生業(なりわい)としている会社なのだから、働き方もなるべく個人の自由を尊重するべきだし、その自由をテコにして何か成果を出せるような形でなければと思う。人手不足といわれて久しいが、中でも知識情報産業は超売り手市場。社員が会社を選ぶ時代だ。「ヤフーで働く意味って何だろう?」というところは、これまで以上にしっかり設計していく。

──2016年の秋に本社移転をされた際、「週休3日」や「新幹線通勤」など、目を引く人事制度を発表されています。社員の利用は進んでいますか?

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