ホワイトハウス前でムハンマド皇太子らに扮し、カショギ氏殺害に抗議する人々(UPI/アフロ)

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(当時は副皇太子)が2016年に米国のコンサルティング会社マッキンゼーの協力を得てまとめた国家改造計画「サウジ・ビジョン2030」は、サウジ経済の改革・開放を進めて、石油収入に頼らない経済構造を目指す大胆なプランとして、好感をもって迎えられた。

日本でもサルマン国王来日時の17年3月に説明会が開催された。日本は欧米と並ぶ「戦略的パートナー」とされ、日本を訪問したサルマン国王に安倍晋三首相は「全面的な協力」を約束した。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長もサウジと10兆円投資ファンド構想をブチ上げ、官民挙げて親サウジ姿勢を鮮明にしていた(記事下囲み)。

ところが、資金獲得の目玉である世界最大の国営石油企業サウジアラムコの上場計画が中止となり、ビジョン2030はのっけからつまずく。そして今回、反体制派のサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館で殺害され、サウジと皇太子の「蹉跌」は決定的となった。

トルコなどの情報によれば、殺害はムハンマド皇太子が指示した疑惑が深まった。サウジに対する国際社会の目は厳しくなっており、ビジョン2030は雲散霧消する可能性が高い。そればかりか、次期国王と目されてきた33歳のムハンマド皇太子の政治的立場も危うくなっている。