うつから抜け出した人たちの体験談をまとめた漫画『うつヌケ』(KADOKAWA刊)が30万部を超える異例のヒットとなっている。漫画家とサラリーマンの二足のわらじを履く作者の田中圭一氏も、10年近くうつに苦しんだ。自身の経験に基づく、ビジネスパーソンの孤独との向き合い方を聞いた。

たなか・けいいち●1962年大阪府生まれ。84年の漫画家デビューとほぼ同時に玩具メーカーに就職し、サラリーマン生活も開始。現在は京都精華大学マンガ学部准教授も務める(撮影:吉濱篤志)

──うつになった原因には、孤独を感じていたこともあるのでしょうか。

僕の場合は転職が大きなきっかけになった。20人ぐらいのベンチャーに転職したのだが、ほとんどがプログラマーで理系。文系は僕1人といっていい状況で、考え方や価値観が違った。

たとえば社内向けのメールや文書を書いたときに、いろんな人から誤字脱字の指摘が来た。「社内向けだし、ニュアンスは変わらないからいいじゃないか」と僕は思う。でも彼らは文字が1つ違っただけでエラーになるとつねに神経を張り詰めて仕事をしている人たちだから、誤字脱字を気持ち悪いと感じる。そうした小さな否定が毎日あった。

「そんなことでニュアンスは変わらないし、社内のメールでしょ」と1人でも言ってくれる人がいれば違ったと思うが、自分以外の人にとっては気持ち悪いのが普通。だから職場では孤独だったし、だんだん感覚がおかしくなって「僕が悪い」と思うようになり、精神的にダメになった。

──すぐに辞めようとはしなかった?