東京駅からJR京浜東北線に乗って横浜駅を過ぎると、次の駅が桜木町駅だ。この駅から海側を眺めると、みなとみらい地区の高層オフィスビルとタワーマンション街が広がる。一方で山側に目をやると、国道16号線が行く手をふさぎ、「のげちかみち」と呼ばれる地下道を潜った先には、怪しげな低層の商店や雑居ビルが並ぶ。この一帯が「野毛町」である。横浜育ちの人ならば、幼い頃一度は足を運んだ野毛山動物園や野毛山公園の展望台に近い。

野毛町は、江戸時代末期に発展した横浜港と東海道をつなぐため、バイパス道路として切り通しが造られ、できた街である。横浜港には三菱重工業の横浜造船所があったため、街は工員たちが食事をする場所としてにぎわった。

戦後は横浜港や伊勢佐木町などが米軍に接収され、進駐軍の街となったが、野毛は日本人街として残り、港町の飲み屋街として栄えた。港や造船所で働く屈強な男たちが集うこの街は、猥雑な雰囲気に満ちあふれ、隣の宮川町から大岡川沿いに黄金町付近まで娼婦の館が軒を連ねた。