自動車を運転中、数百メートル先の車道を歩いている人がいた。運転手が車内ディスプレーのアラームに気づかず走り続けると、車内に警報音が鳴り響いた。自動ブレーキに続いて作動したのが自動ハンドルだ。車はすんでのところで歩行者の脇にそれ、止まることができた。

新型レクサスの安全はソニーの半導体がカギ

この自動ハンドルは、2017年にフルモデルチェンジした高級車レクサス「LS」に搭載されたもの。開発したトヨタ自動車によれば、フロントガラスに取り付けられたカメラが単眼から複眼になったことが、遠方の歩行者や対向車の検知精度を向上させた一因という。

この車載カメラの性能向上のカギとなるのが、レンズの奥に仕込まれた幅1センチメートル程度の長方形の半導体、CMOSイメージセンサー(以下、CMOS)。ソニーが、自動車部品大手のデンソーに供給しているものだ。実はこの小さな半導体チップ、これまで車載関連の事業をほとんど手掛けてこなかったソニーを、次世代自動車産業のキープレーヤーへと押し上げる力を持っているかもしれないのだ。

今年5月に吉田憲一郎社長が打ち出した「第三次中期経営計画」。テレビなどエレクトロニクス系事業の高付加価値化、エンターテインメント系コンテンツの強化に次ぐ、「3本目の柱」として挙げられたのが、CMOSをはじめとする画像センサー事業の強化だった。すでに世界シェア4割を握るスマートフォン・カメラ向けに加え、車載用センサーにも本腰を入れると強調。「20年代のソニーの社会貢献の柱にしたい」と語った。

併せて、画像センサーには、今後3年間で実施する1兆円の設備投資の最大額を使うとも発表された。詳細は公表されていないが、大半はスマホ向けの製造ラインに使われるとみられる。センサーに詳しいIHSマークイットの李根秀氏も「1台のスマホに複数のカメラが搭載されるという追い風が吹く中、スマホ向け最新製造ラインを導入するのだろう」と予測する。