【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

10月9日、日本経済団体連合会(経団連)は、面接開始時期などを定めた採用選考に関する指針を2021年春採用から廃止すると発表した。中西宏明会長が廃止の方針を打ち出した際、大学や中小企業は大きく反発し、政府も同年春の新卒採用については今のルールを守るように要請しているという報道がなされていた。

そもそも経団連の指針には強制力はない。経団連傘下にない企業への影響力も限定的だ。さらにインターンシップによって実質的に採用活動を行っている企業も少なくない。そうした状況に加えて、今日のような圧倒的な売り手市場においては、律義に就活ルールを守った企業が採用で相当な不利を被る事態になっている。

「抜け駆け」のメリットが大きくなると紳士協定は破られるのが常だ。経団連の指針廃止は、あらためて新卒採用の制度的な問題点をあぶり出したと言える。