9月中旬、東京都心の大手家電量販店。発売されたばかりの米アップルの新型スマートフォン「iPhone X(テン)S」を購入した30代の男性が、アクセサリーコーナーでXS用のケースと画面保護フィルムを選んでいた。買ったのはいずれもエレコムの製品。理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。「エレコム? 手に取って気に入ったのを選んだら、たまたまそうだっただけですよ」。

スマホケースや保護フィルムのメーカー名に強いこだわりを持つ消費者は、それほど多くはない。だから、男性が言うように、エレコムの製品が選ばれるのは多くの場合「たまたま」。ただ、その「たまたま」の確率をどれだけ高められるかが企業の競争力になる。冒頭の家電量販店のスマホ関連アクセサリーの売り場で、最も目立つ位置に陳列されていたのはエレコムの製品だった。

エレコムは、パソコン用のマウスやキーボード(ともに国内シェア1位)、無線LAN装置(同2位)、さらにはスマホのケース(同1位)、保護フィルム(同1位)など、IT周辺機器やスマホ関連グッズを幅広く手掛ける。読者も身の回りを探せば、一つくらいエレコム製品を使っているはずだ。

一般に、ある分野でシェアトップを取るには、開発力やコスト競争力、ブランド力、販売力など複合的な優位性が求められる。エレコムの場合、最大の強みは家電量販店の売り場を確保する力だ。

ある家電量販店の売り場担当者によると、「店側にとって、エレコムは非常に売りやすいメーカー」。商品サンプル(見本)や販促物の提供など店舗への協力姿勢が群を抜いているからだという。「お客さんは現物を見て触って確かめたい。でも、サンプルの提供に消極的なメーカーもある。その点、エレコムは協力的だし、サンプルがなくて仕方なしに商品をケースから出してしまった場合でも、嫌な顔をしないでサンプル扱いを認めてくれる」(同)。