ささき・とおる●2015年6月から現職。03年4月からJPモルガン・チェース銀行でFXストラテジストとして金融市場を調査・分析。その前は日本銀行に勤務、調査統計局などを経て、国際局(当時)為替課で為替市場介入を担当、ニューヨークで米国金融市場分析も担当した。(撮影:今 祥雄)

円相場は実質的にかなりの割安水準となっている。日本銀行が算出する実質実効レートで見ると、過去20年の平均から20%も割安となっている。

もう少しわかりやすい例で説明すると、過去20年間で米国の物価は50%以上も上昇したが、日本の物価はほとんど上昇していない。つまり、何かの財に対して米ドルはこの20年間で価値が50%以上下落した一方、円は財に対する価値がほとんど変化しなかった。つまり、米ドルは円に対して50%以上価値が下落したのだ。それにもかかわらず、現在の名目のドル円相場は20年前とほぼ同じ水準にある。つまり、物価との関係で見た米ドルの価値の下落をドル円相場は反映していないのである。

円の実質的なレベルが歴史的な円安水準にあるのに、円高方向への動きが見られない背景として、①日本企業による対外直接投資、②日本の投資家による対外証券投資の大きさ、を指摘してきた。だが、最近の非常に根強い円安基調については、③原油価格の上昇による貿易収支の悪化、も寄与している可能性があると考え始めている。原油価格は昨年半ば頃から上昇基調をたどり、1年強の間に倍近くにまで上昇してしまっている。