伊藤秀二(いとう・しゅうじ)/1957年生まれ。法政大学経営学部卒業。1979年カルビー入社。じゃがりこカンパニーCOOなどを経て、2009年に社長兼COOに就任。2018年6月から社長兼CEO(撮影:梅谷秀司)

今年6月、カルビーで会長兼CEOとして9年間辣腕をふるってきた松本晃氏が退任した。同社の業績を躍進させた“カリスマ経営者”の退任発表時には株式市場も反応し、株価は一時10%近く下落。去就に注目が集まる中、RIZAPグループのCOO就任が話題になったのは記憶に新しい。

2009年に創業家に請われ経営に参画した松本氏は、就任以来徹底したコストカットを断行。その分を原資に製品の値下げを行った。スナック市場でのシェアを上げ、工場の稼働率が大幅に向上した。一連の改革によって、就任前に2%程度だった営業利益率はここ数年で10%を超えるようになった。

カルビーは「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「じゃがりこ」など多数のロングセラー商品を持つ。スナック市場でのシェアは5割、ポテトチップスに限れば7割にまで達するスナック市場の“ガリバー”だ。

これまで、松本氏と二人三脚で経営を担ってきたのが、生え抜きで社長兼COOを務めてきた伊藤秀二氏だ。松本氏の後任としてCEOに就任した伊藤氏は、カリスマが去ったカルビーの未来をどのように描くのか。伊藤氏を直撃した。

「RIZAPに行ったのは予想していなかった」

──松本氏がカルビーの経営から退いた後、RIZAPグループのCOOに就任することが発表されました。どう思いましたか?

正直驚いた。行くとしたら、医療分野の企業に行くと思っていた(編集部註:松本氏はカルビー会長兼CEOの就任前に製薬や医療機器を扱うジョンソン・アンド・ジョンソン日本法人社長を経験)。社外取締役くらいなら受けるかなとは思っていたが、まさかCOOとは。カルビーに入ったときも、しんどいからCOOはやらないと言っていたのに……(笑)。

──松本氏の退任が3月に発表されたとき、社内で混乱はありましたか。

そんなことはない。当社は、3月期の一般的な企業よりも早く次年度の人事や体制を決める。たとえば新年度を迎えた今年4月の人事などは昨年11月に決まっていた。年度末の3月に人事を発表すると、4月からの仕事は前任者のプランに沿ってやらなくてはいけない。自分の仕事に責任が持てず言い訳ができてしまう。今期の体制は実質的には昨年からスタートしていたので、組織的な混乱はなかった。

また、松本氏が現場に入っていた部分もそんなに多くなかった。中国事業やフルグラ事業など携わっていた部分は、現在私が担当している。それらの分野についても、もともと私が現場に入っていたので大きく変わった部分はない。

カルビー退任発表後、殺到した20近くの社長就任オファーの中から松本晃氏が選んだのはRIZAPグループだった(撮影:尾形文繁)

──次年度の人事や体制を決めるころからは、伊藤社長の独自色が強く出てくるのでしょうか。

会長だった松本氏には拒否権はあったものの、人事などの決裁権は私が持っていた。これまで私自身が人事に触れてこなかった部分はない。ただ、CEOとCOO体制が本当にいいのかは検討していく。2頭体制は、お互いを補完し合ってうまくいくときもあれば対立してしまうこともあるからだ。

「必要な投資が後回しになっていた」

──実際、松本氏との2頭体制でやりづらさもありましたか。

多少はあった。経営のすべてでぶつかるわけではないが、具体化するにつれて当然意見が割れることも多くなる。トップ同士の意見が割れ、現場が混乱して戦略が徹底できなくなる機会ロスが一番怖い。意見が割れたときには、CEOの松本氏にCOOとしての権限を委譲する形でバランスを取っていた。

松本氏は、意見が決まればもう止められない。私自身、40年近くカルビーにいて、変えてはいけないもの、壊さなくてはいけないものはわかっているつもりだ。今は、彼が進めていて少し行きすぎていた部分を少しずつ変えていっている最中だ。

──具体的にはどういった部分ですか。

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