フランスの「支払い停止」は各国に衝撃を与え、薬物療法を検証する機運を高めている

発症した本人のみならず、家族の負担も大きい「アルツハイマー型認知症」(AD)。高齢化社会に突き進む中、世界の認知症人数は約4680万人(2015年)が、50年に約1億3150万人まで増加の見込み。治療や介護にかかるコストは、今年中に1兆ドル(約112兆円)を超えるともみられており、100兆円弱である日本の一般会計予算年額を上回る。

物事をすぐに忘れる記憶障害、自分の居場所がわからない中での徘徊(はいかい)、場合によっては家族や他人への暴言や暴力など、その症状はさまざまだ。家族やコミュニティによる介護などが必須となり、社会的・経済的な負担は甚大だ。

そんな中、ADの治療を考えるうえで、世界中に波紋を投げかける決定がフランスで下された。日本などでは限られた治療法の中で重要な位置づけにある「医薬品」を公的医療保険の対象から除外すると打ち出したのだ。

日本でも使用される薬に「効果不十分」の烙印

「AD治療薬の医療上の利益は公的保険下で使用するには不十分」。今年6月、健康保険を担当するフランス保健省は、こんなタイトルを冠した2ページの文書を発表した。内容は至ってシンプル。AD治療薬4製品とそのジェネリック(後発品)は、「有効性が低い」にもかかわらず胃腸や心血管、精神神経の障害などの副作用が生じるリスクがあるため、8月1日から公的保険による支払い(保険償還)を停止する、というものだ。

対象は日本でもAD治療においておなじみとなっている製品だ。「ドネペジル」(エーザイの「アリセプト」)、「ガランタミン」(ヤンセンファーマ・武田薬品工業の「レミニール」)、「リバスチグミン」(ノバルティスファーマの「イクセロンパッチ」と小野薬品工業の「リバスタッチパッチ」)、「メマンチン」(第一三共の「メマリー」)である。

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