生活に必要な最低限の現金を全国民に無条件で支給する「ベーシックインカム」(BI)が注目されている。しかし、BIは巨額の財源を必要とするだけでなく、制度設計によっては低所得者に不利な逆進的政策ともなりかねない。また米国では「連邦政府が全国民の雇用を保障する」という政策案が左派の間で支持を集めているが、連邦政府の財政は逼迫しており、これも現実的でない。

雇用にとっての本当の問題とは実は量ではなく、質だ。まともに生活できる収入が得られるかどうかが問題になっているのである。OECD(経済協力開発機構)によると、2007〜17年にすべての先進国で低賃金の仕事が増加し、実質賃金は停滞、会社員の福利厚生も減少した。

リーマンショック以降、米国の雇用は(両端が大きい)ダンベル状に拡大してきた。片方ではSTEM(科学、技術、工学、数学)分野を軸に高スキル・高収入の求人が増加し、240万人もの人材不足を抱える。しかし、その対極では「ギグエコノミー」と呼ばれる非正規雇用が経済全体の3倍のスピードで拡大し、まともに暮らしていけない人が増えている。