取材時、学長室を出て屋外で撮影しようということになった。予定時間はすでにオーバーしている。それでも、彼はいっさい、急がす言葉を口にしない。

「いいですよ、聞きたいことがあれば聞いてください」

ウスビ・サコ、52歳。3人の候補者の中から選挙で選ばれ、2018年春、京都精華大学の学長に就任した。アフリカ出身の学長は日本では初めてだ。

ソファと執務机を置くとやや窮屈そうな学長室。普段はサンダル履きで、学生に「サコ」と呼ばれても気にしない。「私は庶民派学長ですから」(撮影:ヒラオカスタジオ)

物珍しさも手伝ってか、取材が殺到していた。講演依頼も多いという。スケジュールが過密になるのには、本人の考え方も影響している。

「自分の都合で関係を壊したくないんです。そのために、時間の使い方はめちゃくちゃになりますけれど」

その場しのぎでいいかげんに話を切り上げることをしないため、予定がいつも押してしまうのだ。

京都精華大は京都市の北に位置している。市の中心部からは地下鉄とスクールバスを乗り継いで約30分。芸術・人文系の五つの学部を有する小規模な大学だ。日本で初めてマンガ学部を設置した大学としても知られる。

サコが専任講師としてこの大学にやってきたのは、01年のこと。以来、文化表現学科長や教務主任、人文学部長などを歴任してきた。

京都精華大の学長は、専任の教職員全員による選挙で選ばれる。立候補には10人の推薦が必要だ。

「こんなに注目され、私たちも驚いているんです」と理事長の石田涼は言う。

「私たちは肌の色や宗教など関係なく、ただ単に、彼が学長にふさわしいと思って選んだだけ。アフリカ出身者を選んだという意識はまったくなかった」

サコ自身も「この大学に来てから学長になるまで、自分が外国人だと感じたことはない」と言う。

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