2017年末、英医学専門誌『ランセット』は「アルツハイマー病の35%は予防できる」とする論文を発表した。この論文は、世界各地の専門家24人の研究に基づくもので、エビデンス(科学的根拠)のレベルが高い論文として世界の注目を集めた。

「ついに35%まできた」。1980年代前半から研究してきた認知症予防の草分け的存在、鳥取大学の浦上克哉教授はこの論文を読んで隔世の感を覚えた。「アルツハイマーは治らない病気だから予防できるはずがない」。そんな逆風を30年近く受け続けてきたからだ。

「認知症は(浦上教授が属する)神経内科ではなく精神科の領域」というのが当時の常識。神経内科の主な研究テーマはパーキンソン病や脊髄小脳変性症が中心で、また精神科においても統合失調症、うつ病が中心だった時代の話だ。専攻を聞かれて認知症だと浦上教授が伝えると、「君、変わっているね」と言われたほどだった。

「認知症を予防できる確率はゼロ%、ナッシングだと言われ続けてきたが、エビデンスが積み上がり、今後も予防できる確率が年々上がっていくだろう」(浦上教授)

鳥取大学医学部教授/日本認知症予防学会 理事長 浦上克哉
うらかみ・かつや●1956年生まれ。83年鳥取大学医学部卒業、2001年より同大教授。11年に日本認知症予防学会を設立、初代理事長に就任。

国の認知症研究の総本山、国立長寿医療研究センターでは、第一線の専門家が介入し運動療法など予防活動を続ければ80%台まで予防効果が高められるという研究結果も出てきている。